W2-1  乳酸菌による抗炎症のメカニズム

  • 辻 典子
    産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • [Not Available].

この論文をさがす

抄録

小腸には多くの免疫細胞が集積し,免疫情報(自然免疫シグナルと抗原情報)を全身に伝える免疫応答の場となっている.乳酸菌は小腸の主要な常在細菌のひとつであり,消化管免疫を刺激するとともに他の病原微生物と拮抗することで腸内環境の恒常性維持にも役立っている.小腸においては食物由来の微生物成分も同様に,消化管免疫の活性化と健康増進に関与すると考えられる.<br>  私たちは乳酸菌が2本鎖RNAを豊富に含み,樹状細胞のエンドソームに存在するToll様受容体(TLR)3を刺激してインターフェロン-β(IFN-β)の産生を誘導することを見いだした.さらに,このIFN-βには腸炎を予防する抗炎症機能があることを示した.乳酸菌の経口投与によるIFN-βの産生誘導はTLR3遺伝子欠損マウスにおいてはみられず,乳酸菌に含まれる2本鎖RNAの分解,あるいはエンドソームの酸性化の阻害によっても消失した.以上より,TLR3は小腸に常在する乳酸菌に対するセンサーとしてはたらき,腸炎の抑制や免疫恒常性の維持に寄与すると考えられた.また,我々はIFN-βがT細胞の機能分化にもさまざまな効果をもたらすことを観察しており,特にTh1細胞および制御性T細胞の機能成熟に関与すると考えられる.<br>  さらに,乳酸菌の継続した経口投与により脾臓の樹状細胞においてもIFN-βの発現が増強した.このことは乳酸菌が腸管のみならず全身性に効果をもたらすことを示唆している.<br><br>  【参考文献】 Double-Stranded RNA of Intestinal Commensal but Not Pathogenic Bacteria Triggers Production of Protective Interferon-β. Kawashima T, Kosaka A, Yan H, Guo Z, Uchiyama R, Fukui R, Kaneko D, Kumagai Y, You D-J, Carreras J, Uematsu S, Jang MH, Takeuchi O, Kaisho T, Akira S, Miyake K, Tsutsui H, Saito T, Nishimura I, Tsuji NM Immunity 38: 1187-97 (2013).

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ