バルプロ酸ナトリウムはメチマゾールによるマウス嗅上皮傷害モデルにおいて嗅神経再生を促進する

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  • Valproic acid promotes neural regeneration of olfactory epithelium in mice after methimazole-induced damage

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抄録

バルプロ酸はヒストン脱アセチル化酵素作用をもち,神経幹細胞の分化制御に作用することが報告されている。感冒罹患後や外傷後の嗅覚障害患者の嗅上皮は,嗅神経細胞は高度に変性・脱落しているが,基底細胞は残存している症例もあることが報告されており,この基底細胞層には嗅神経幹細胞が存在し,生涯にわたりターンオーバーを続ける。そこで,我々はバルプロ酸が嗅神経幹細胞を刺激し,嗅神経細胞再生を促進すると仮説をたて検討した。<br/>マウスにメチマゾールを投与して嗅上皮傷害モデルを作成した。メチマゾール投与により嗅上皮は剥脱するが自然経過で嗅上皮は再生する。我々は,バルプロ酸を連日内服させ,この再生過程に与える作用を組織学的にヘマトキシリン・エオジン染色(HE 染色)と免疫染色(OMP 抗体,Ki-67 抗体,BrdU 抗体,GAP-43 抗体)を用いて検討した。バルプロ酸により嗅上皮の厚みや成熟嗅神経細胞数の回復は用量依存性に促進された。また,バルプロ酸により,嗅神経前駆細胞は早期に増殖し,成熟嗅神経細胞へと分化した。<br/>現在,難治性である神経性嗅覚障害に対して確立された有効な治療薬はなく,新規治療薬の開発が望まれる。バルプロ酸は眠気などの問題点はあるが,てんかんの治療薬として40 年以上前から臨床で広く使用されており,小児にも使用されている比較的安全な薬物であり臨床応用しやすく,難治性神経性嗅覚障害の新規治療薬としての可能性がある。

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