Sylvius前枝の血管から見た運動言語野の測定

書誌事項

タイトル別名
  • Angiographic measurement of the motor speech area by defining anterior Sylvian arteries

抄録

感覚言語野としての側頭葉平面 (Wernicke野) と, 運動言語野としての前頭下回弁蓋部 (Broca野) とは, それぞれのタイプの失語症病変からその局在部位がほぼ認められている. すでにWernicke野については, いくつかの解剖学的および画像診断学的研究によって優位脳の形態的lateralityが確定された. これに対し運動言語野はその面積が小さいこと, 軸位断層でその同定がむつかしいことなどによって, 感覚言語野のような形態学的左右差を検索した報告はきわめて少ない. この研究では, まず器質的疾患をもたない48例の左右内頸動脈動脈相を比較し, 下前頭回に交差する前中心溝下半部, Sylvius前枝の垂直枝と水平枝の各溝を, そこに入る前中心動脈・前前頭動脈・眼窩前頭動脈の走行によって決定した. ついで, (1) それぞれの動脈が内側に走って到達する各溝の深さを測定し, (2) 各溝の深さの大脳最大幅に対する比率をもって, 下前頭回の弁蓋部・三角部・眼窩部に拡がりの指標として左右の値を比較した, (3) また各動脈の太さはそれが分布する領域の広さに比例することから, それについても左右差を検討した. 48例のうち右利きは46例, 左利きは2例 (内完全な左利き1例・両手利き1例) である. 46例の右利き例における左右の比較は, 運動言語野とされる弁蓋部でも, 三角部・眼窩部でも対側とのあいだに有意差はなかった. ただ, 左右利き1例においてのみ右側の値が有意に大きかった. しかしながら, 上記3本の動脈径の左右比較は明らかに優位脳側前中心動脈の径が大きいことが判かった. この観察法は運動言語野の推定に実際的な意義があるものと考える.

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参考文献 (1)*注記

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