ウシでの腎糸球体濾過量(GFR)に関する基礎的研究

  • 村山 勇雄
    宮城県農業共済組合連合会 家畜診療研修所

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タイトル別名
  • Basic studies on estimation of glomerular filtration rate in cattle
  • ウシ デ ノ ジンシキュウタイ ロカリョウ(GFR)ニ カンスル キソテキ ケンキュウ

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抄録

ウシの臨床現場で行われる腎機能検査は,尿の定性試験や血液生化学検査などの定型的な腎機能検査が行われているに過ぎない.一方,ヒトでは腎残存予備能を把握するために,腎糸球体濾過量(GFR)の測定が標準法として行われている.今回,ウシにおいて簡便なGFR測定法を確立することを目的に,新規トレーサーとして安全性が高く微量測定が可能な,非イオン性等張2量体X線造影剤であるイオジキサノール(iodixanol)に着目した.初めに,本剤とホルスタイン種乳牛を用いて,単回静注・頻回採血法によってGFRを全身(血漿)クリアランスとして算出することを目的としてiodixanol投与量と採血時間の設定(最適用量:10mg I/kg,最適採血時間:60,90および120分)を行った.そして,Jacobssonの1回採血法の式 [1] と頻回採血法のGFR値から,分布容積(distribution volume:Vd=381.76 e-0.058Ct,Ct:60分時血清iodixanol濃度)を求め,ホルスタイン種乳牛でのiodixanol単回静注・1回採血法でGFRを求める新たな式(ホルスタイン種1回採血式)を作出した.次に,黒毛和種肉用牛を用いて,ホルスタイン種乳牛の場合と同様に頻回採血法でGFRを算出した.ホルスタイン種1回採血式を用いて得られたGFR値と頻回採血法で求めたGFR値を比較したところ,ホルスタイン種1回採血式は,黒毛和種肉用牛にも共通して適用できることが判明した.従って,ホルスタイン種1回採血式は,黒毛和種肉用牛のGFR測定にも利用できると判断した.またGFR値には,品種差があることも確認した.GFR値が70%程度低下すると,血清creatinine値の上昇を認め,ヒトでの関係と同様な傾向が認められた.以上よりJacobssonの式とiodixanolを用いた1回採血法は,GFR測定の簡便法として,臨床学的,臨床薬理学的および薬物動態学的研究に利用できると考えられた.

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