髄膜腫を伴った猫の犬糸状虫症の一例

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タイトル別名
  • A Case of Feline Heartworm Disease with Meningioma
  • 症例報告 髄膜腫を伴った猫の犬糸状虫症の一例
  • ショウレイ ホウコク ズイマク シュ オ トモナッタ ネコ ノ イヌ シジョウチュウショウ ノ イチレイ

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抄録

猫の犬糸状虫症は無症状のことが多く,その確実な診断や治療法については依然不明な点が多い。今回我々は痙攣発作を伴う犬糸状虫症の猫に遭遇し,最終的に剖検と全身的な病理組織検査を行い検討した。症例は雑種猫17歳で不妊済雌。各種予防は不完全で体重2.5 kg (BCS2)であった。2カ月前に腎不全と診断された。夏の暑い日に屋外で失神し虚脱状態で来院した。その後治療中に強直性痙攣を呈した。両眼の散瞳と網膜剥離および血色素尿を認め,犬糸状虫抗原検査を実施したところ陽性であった。また,FIV抗体陽性であった。その後,覚醒を保ったまま痙攣を止めることができず,飼い主と協議の結果,安楽死となった。剖検では胸水や腹水等は認めず,各種臓器は腎萎縮と肺の内出血のみを確認した。病理組織診断は,尿毒症の重度血管変性による多臓器不全,脳底部の髄膜腫とそれに伴う髄膜炎とのことであった。右心室腔内には犬糸状虫が2隻観察された。右肺,後葉の肺内動脈の主幹には犬糸状虫の死滅虫体が塞栓していた。肺内肺動脈の内膜は絨毛状に増殖し,内腔はほぼ消失していた。以上の点から,猫の犬糸状虫症では,重度の血管病変や肺病変がありながら,ほとんど呼吸器症状や心不全の兆候を認めない例もあることを改めて認識させられた。

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