『ポドサイトを標的とした基礎研究の新展開』 Podocytologyがひらく新しい慢性腎臓病治療戦略

DOI Web Site Web Site PubMed 参考文献16件 オープンアクセス
  • 井上 隆司
    福岡大学 医学部 生理学
  • 淺沼 克彦
    順天堂大学 医学部 腎臓内科 京都大学大学院 医学研究科 メディカルイノベーションセンター TMKプロジェクト
  • 関 卓人
    順天堂大学 医学部 腎臓内科 京都大学大学院 医学研究科 メディカルイノベーションセンター TMKプロジェクト
  • 長瀬 美樹
    東京大学大学院 医学系研究科 腎臓 内分泌内科
  • 長船 健二
    京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • New therapeutic insights for chronic kidney disease provided by podocytology
  • ポドサイト オ ヒョウテキ ト シタ キソ ケンキュウ ノ シン テンカイ : Podocytology ガ ヒラク アタラシイ マンセイ ジンゾウビョウ チリョウ センリャク

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抄録

腎糸球体壁は毛細血管内皮細胞,基底膜,足細胞(ポドサイト,podocyte)が形成する「スリット膜」と呼ばれる特殊な3層構造からなり,常に60 mmHg以上の血管内圧を受けている.足細胞は分岐した突起を互いに伸ばして20~45 nmの間隙を形成し,この間隙は小孔が規則的に並んだ構造を有するスリット膜によって覆われている.糸球体の限外濾過能力は,主にこの孔の大きさと基底膜の陰性荷電とに依っている.種々の原因によって足細胞のリモデリングや障害が生じると,足細胞突起が展退してスリット膜の濾過障壁としての機能が失われ,タンパク尿を伴う慢性腎機能不全に陥る.最近有病率が急速に増加しつあるタンパク尿を伴う慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の多くが,足細胞の障害に起因すると考えられている.足細胞の突起は収縮能を有するアクチン線維が分布し,正常時には毛細管内圧変化に応じて収縮し,濾過障壁の溶質透過性をダイナミックに調節していると想像されている.スリット膜の足細胞突起側には,数多くのタンパク質(nephrin,Neph1,podocin,TRPC6等)が集積して複合体を形成し,足細胞内でアダプタータンパク質(CD2AP等)を介してアクチン細胞骨格と連結している.最近の研究から,この膜タンパク質-細胞骨格複合体が,腎糸球体の濾過機能制御において,決定的な役割を果たす種々のシグナル伝達のプラットホームとして機能していると考えられるようになってきた.さらに,これらのタンパク質の遺伝的・後天的要因(炎症,化学物質暴露等)による量的・機能的変化が,腎糸球体の濾過障壁機能の異常や消失を引き起こす重要な原因となっている証拠が得られつつある.しかし,これまでの多くの研究は,足細胞を単離することの技術的困難等から,ほとんど形態的・生化学的解析に限られていた.近年,これを大きく打開したのは,不死化足細胞の樹立である.また最近では,iPS細胞から足細胞を再生する技術の開発についても展望が開けつつある.本シンポジウムでは,「Podocytologyがひらく新しい慢性腎臓病治療戦略」と題し,不死化足細胞株樹立等の実験手法の革新によって急速に進みつつある足細胞機能異常に関する研究(podocytology)の最新の成果の紹介と,それらが今後のCKD発症増悪の予防・軽減の治療戦略にもたらす可能性や展望について議論を行った.以下にはそのエッセンスについて,各演者の先生方にお纏めいただいた(第86回日本薬理学会年会シンポジウム オーガナイザー 井上隆司,淺沼克彦).

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