高齢者の陳旧性顎関節前方脱臼の1例

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タイトル別名
  • A Case of Long Standing Dislocation of Bilateral Temporomandibular Joints of the Elderly

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抄録

意識下および静脈内鎮静下での整復が困難であり,全身麻酔下に筋弛緩剤を併用して整復した高齢者の陳旧性顎関節前方脱臼の1例を経験したので,その概要を報告する。 症例:83歳,女性。主訴:閉口不能。現病歴:2011年5月下旬より同年7月初旬まで肺炎のため某病院に入院。入院加療時の気管挿管の際に両側顎関節脱臼をきたしたと思われる。退院時8 kg の体重減少があり,使用中の義歯不適合の影響と説明され,近歯科医院を受診した。そこで顎関節脱臼を指摘され同年8月末に当院紹介初診となった。意識下および静脈内鎮静下での徒手整復が困難であったため,全身麻酔下に筋弛緩剤を併用し徒手整復を施行し奏功した。無歯顎であったため,上下顎総義歯を装着し顎間固定を行った。術後1年半が経過し,再脱臼なく経過良好である。 顎関節脱臼は,特徴的な臨床所見から容易に診断,治療されるが,患者の全身状態が重篤な場合には放置されたり,高齢者や無歯顎者では自覚症状が乏しいため発見が遅れ,陳旧化をきたすことがある。陳旧性顎関節脱臼は,下顎窩内組織の線維化や関節包の瘢痕化などの器質変化が生じ,意識下での徒手整復が困難なことが多く,全身麻酔下に筋弛緩剤を併用した徒手整復は有用であった。 高齢者の入院,介護にあたり起こり得る顎関節脱臼については,歯科医師が啓発していくべきである。今後,適切な歯科と医科との医療連携の構築が必要と考えられた。

収録刊行物

  • 老年歯科医学

    老年歯科医学 28 (3), 284-288, 2014

    一般社団法人 日本老年歯科医学会

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