高精度GPS を用いた河川ハビタット構造の定量化と底生動物の種多様性保全への活用

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タイトル別名
  • Delineation of habitat structure in rivers using a high precision GPS for conservation of species diversity of invertebrate communities
  • コウセイド GPS オ モチイタ カセン ハビタット コウゾウ ノ テイリョウカ ト テイセイ ドウブツ ノ タネ タヨウセイ ホゼン エ ノ カツヨウ

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抄録

本研究では,河川のハビタットを流水性ハビタット 4 種と止水性ハビタット 3 種の計 7 種に分類し,高精度 GPS を活用して定量調査をするとともに底生動物の定性調査を行った.これら調査を貯水ダムの上下流域で実施し,1) ハビタット構造に及ぼすダム影響評価への高精度 GPS の適用性を検討し,2) 河川リーチ内のハビタット構造と底生動物の種多様性の関係を評価した.2007 年 12 月に宮城県中南部地域の 9 河川区間において,底生動物調査を行い,2008 年 7 月から 10 月に高精度 GPS を用いたハビタット構造調査を行った.樽水ダムおよび釜房ダム直下区間のハビタット多様性及び止水性ハビタット面積比は上流区間より低かった.しかし,大倉ダム直下区間は,ハビタット多様性が上流区間より高かった.これは,河川の蛇行度が他の地点と比較して高かったことと,河岸周辺の地質が軟らかく土砂供給が容易だったことの条件が揃った事で生じた推察される. 底生動物の分類群数は,止水性ハビタットの面積比と正の相関があり,河川内の止水性ハビタットの割合が増加するほど底生動物の分類群数が増加する傾向が見られた.止水性ハビタットは,河床に細粒分の土砂や有機物が堆積しやすい環境にあり,このような環境を好適に選択する種の生息機会が増えたため,区間内により多くの種が出現しやすくなったと考えられる.生物の種多様性と止水性ハビタット量の関係は,リーチ内の生物多様性の保全対策において,止水性ハビタットを環境評価の指標として加える必要性を示している.ダム下流域で河川環境改善を目的とした様々な施策が行われ,その成果の評価に止水性ハビタットを指標として活用すれば,ダム下流域の生物多様性の回復を図れる可能性がある.

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