僧帽弁形成術中に左室破裂を生じた1例

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  • A Case of Left Ventricular Rupture during Mitral Valve Reconstruction

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抄録

左室破裂は心臓手術の際に生じうる重症な合併症のひとつであり,僧帽弁置換術に伴っておこることが多いとされる.われわれは僧帽弁形成術の施行中,人工心肺終了後の止血中に左室破裂を生じ,再度の人工心肺装着,補助下に破裂部直接縫合閉鎖を行い救命し得た症例を経験したので報告する.症例は58歳男性,健診で心雑音を指摘され近医受診,心エコーにて僧帽弁逸脱による3度の僧帽弁閉鎖不全と診断された.胸骨正中切開,人工心肺使用,心停止下にゴアテックス糸による腱索再建を行い,人工弁輪を縫着して僧帽弁形成を行った.人工心肺からの離脱は容易であったが,その後の止血中に心嚢内出血が増加,左室後壁にoozing出血部を認め,左室破裂と診断した.再度人工心肺を装着,心拍動下にフェルトストリップで破裂部を挟み込むように縫合閉鎖し,フィブリンシート,PGAシート,フィブリン糊にて補強して止血した.IABPを挿入して手術を終了,7日目にIABPを抜去,その後著変なく経過した.術後13日目に心房粗動を発症し薬剤抵抗性であったため,高周波アブレーションを施行し,術後44日目に独歩退院された.左室破裂の原因として乳頭筋の過剰切除,乳頭筋切除によるmitral loopの破綻,弁輪組織の過剰な切除等のほか,乳頭筋の強い牽引や吸引管等の接触による左室内面の損傷,人工心肺離脱時の左室の過負荷なども考えられることから,僧帽弁形成術においても左室破裂が起こりうることを認識したうえで,注意深い心内操作を心がけることが必要と考えられた.

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