胎児の頸部嚢胞穿刺が出生前診断と分娩管理に有用であった先天性梨状窩瘻の1症例

書誌事項

タイトル別名
  • Usefulness of fetal neck cyst puncture for prenatal diagnosis and management of childbirth in a patient with congenital pyriform sinus fistula
  • 症例報告 胎児の頸部囊胞穿刺が出生前診断と分娩管理に有用であった先天性梨状窩瘻の1症例
  • ショウレイ ホウコク タイジ ノ ケイブノウホウセンシ ガ シュッショウゼン シンダン ト ブンベン カンリ ニ ユウヨウ デ アッタ センテンセイ ナシジョウカロウ ノ 1 ショウレイ

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抄録

梨状窩瘻は第3-4鰓遺残によると推察される先天異常で,瘻孔を作り頸部に嚢胞を形成する疾患である.幼児期や小児期以降に有痛性頸部腫瘤や発熱などの臨床症状を呈して発見されることが多いが,本疾患の胎児診断例の報告は極めて少ない.今回われわれは,嚢胞内容の細胞診から出生前に先天性梨状窩瘻の推定診断に至った胎児頸部嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は29歳,1経妊0経産.妊娠初期から当院で妊婦健診を行い,妊娠28週4日に胎児頸部の3cm大の嚢胞性腫瘤と羊水ポケット9cmの羊水過多を認めた.妊娠30週5日のMRIでは,上咽頭背側から左頸部にかけて25mm×44mm×36mm大のT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号の単房性腫瘤を認め,咽喉頭レベルで気道の圧排所見を伴っていた.リンパ管腫を疑い,生後の確実な気道確保と経腟分娩の選択を目的として妊娠35週6日に胎児頸部嚢胞穿刺を行った.26mlの内溶液を穿刺吸引したところ嚢胞は縮小し,穿刺内容液の細胞診ではリンパ球の血球成分に乏しく,扁平上皮細胞を認めたため,先天性梨状窩瘻が考えられた.妊娠37週4日に誘発分娩を行い,同日経腟分娩に至った.児は出生体重2088gの女児でApgar scoreは8/9点であった.生後のCTで嚢胞内に空気を認めていたことから気道系や食道系と交通性のある嚢胞が考えられた.日齢1より哺乳不良と嚢胞の増大を認めたため,日齢12に根治手術を施行され,梨状窩瘻の診断確定に至った.胎児の頸部に単房性嚢胞を認めた場合には先天性梨状窩瘻を鑑別に挙げる必要がある.気管の圧排が顕著な場合にはEXIT(Ex utero intrapartum treatment)も考慮されるが,今回の症例では分娩前に嚢胞を穿刺吸引することで安全に経腟分娩が選択しえた.〔産婦の進歩65(3):277‐282,2013(平成25年8月)〕

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