IgG4関連疾患の病理所見-臓器間での類似性と差異

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抄録

IgG4関連疾患(IgG4︲RD)の概念成立の過程で病理所見が重要な役割を果たしてきたが,これは 単に免疫染色で多数のIgG4陽性細胞を認めるという理由だけでなく,その組織像がユニークで あることが大きな理由である.自己免疫性膵炎(AIP)には1型,2型と呼ばれる2つの亜型の存在が 知られているが,その解明のきっかけとなったのは免疫染色抜きの組織学的解析であった.なか でも1型AIPにみられる花筵状線維化,閉塞性静脈炎は,2型AIPには認められない重要な所見と 考えられてきた.  花筵状線維化は炎症細胞浸潤と小型紡錘形細胞からなり,花筵状の錯綜配列を示し,さまざまな 程度の線維化を伴う病変である.“線維化”とはいっても,細胞成分に富みコラーゲンの乏しい 病変も含まれる.慢性炎症では線維化巣において細胞成分が乏しいことが殆どであるため,花筵状 線維化は通常の慢性炎症にみられる線維化とは異なる.閉塞性静脈炎は静脈が炎症性に閉塞する 所見で,細静脈に認められる.1型AIPにおいては細静脈にみられる組織像に特徴があり,より 大きな細静脈に起こり,また数が多いために従来から多くの研究者により報告されてきた.花筵状 線維化と閉塞性静脈炎はのちに,IgG4︲RDを特徴づける組織像として膵外のIgG4︲RD臓器病変を 解明していく上で重要な役割を果し,今日ではIgG4︲RDの病理診断の上で重要な所見と認識されて いる.  IgG4︲RDの組織像には臓器間での違いもあり,特に炎症の局在に注目するとそのことが明らかで ある.1型AIPでは膵小葉,膵管,静脈などの炎症に加え,膵境界部で膵実質を取り巻く帯状の 炎症がみられるが,この部分では花筵状線維化や閉塞性静脈炎が顕著である.臓器辺縁に炎症が 強いことはIgG4︲RDの1つの特徴で,傍大動脈炎や腎盂・尿管病変は類似の現象と捉えること が可能である.ところが,頭頸部領域の病変においては臓器辺縁の炎症所見を欠くことが多く, 花筵状線維化や閉塞性静脈炎の出現頻度も低い.なかでも眼科領域の病変は線維化を欠き,リンパ 増殖性病変のような組織像を呈することが多い.腎病変や唾液腺病変の組織像は1型AIPの小葉 病変と類似した像と解釈すれば理解しやすいが,1型AIPにみられるような組織像の多彩性はなく, 一見捉えどころのない組織像のようにみえる.唾液腺においてはリンパ濾胞の形成が目立つことも, 1型AIPとの違いである.  このような組織像の類似性と差異が何故生じるのか,今後の検討が必要である.

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