ヒト子宮内膜上皮の周期性変化に関する超微形態学的研究

書誌事項

タイトル別名
  • Ultrastructural Studies on Cyclic Changes in the Human Endometrium

抄録

子宮体から子宮頸部にわたる内膜上皮細胞の月経周期変化および閉経後の変化を,組織学的所見に基づき,超微形態学的に観察し特に妊卵の着床との関連,ならびに組織学的内子宮口における体部と頸部の境界を検討した.<BR>子宮体内膜上皮細胞には,無線毛細胞と線毛細胞とがみられ,前者が大部分を占めていた.<BR>透過電顕所見では,無線毛細胞は,増殖期初期から中期にかけて,ribosomeが次第に増加し,roughER,Golgi装置,mitochondriaなどの細胞内小器官が発達し,増殖期後期には細胞内小器官がさらに発達し,基底側にglycogenの蓄積がみられた.<BR>分泌期には初期から中期にかけて細胞内小器官は膨化を示し,空胞形成が進み中期にはこの変化が最大となり,その後次第に退行変性を示した.増殖期に増加したribosomeは,分泌期中期から次第に減少した.<BR>一方,線毛細胞の細胞内微細構造には著明な周期的変化は認められなかった.走査電顕所見では,無線毛細胞の遊離縁は増殖期初期から膨隆し,分泌期中期から後期に隆起が最大となり,apocrine,microapocrine分泌様所見が認められた.表面の微絨毛は増殖期初期には短小であるが,増殖期後期から分泌期初期にかけてやや膨化し,その後細胞表面の膨隆にともない減少し,穎粒状となり,消失した.<BR>線毛細胞は増殖期には増加し,増殖期後期には最多となるが,分泌期では中期から後期にかけて減少した.線毛は増殖期初期では短小で未熟型であるが次第に長くなり,増殖期後期で最長となり成熟型となる.分泌期中期から後期では短小となった.<BR>閉経後の内膜は萎縮性変化が主体となり,線毛細胞は少数で,その線毛も短小であり,無線毛細胞遊離縁も平坦で微絨毛は密または疎なものが混在した,<BR>子宮頸内膜は体内膜に比し線毛細胞は少数で,月経周期に於けるその変化は殆どみられない.<BR>透過,走査電顕所見では,無線毛細胞は,体内膜と異なり排卵期に細胞内小器官の発達が著明となり,分泌穎粒の蓄積が最大となった.<BR>組織学的内子宮口における子宮体内膜と子宮頸内膜の移行部では,相互の細胞の侵入像,又は細胞相互の移行型はみられず,極めて明瞭な境界線を画していることが明らかになった.<BR>線毛細胞の分布密度は子宮体と子宮頸において顕著な差がみられたが,子宮体内膜の子宮腔の部位による分布に差は認められなかった.従って,妊卵のほとんどが子宮底付近の前壁あるいは後壁に着床するという現象を重視した場合,線毛細胞のreproductionにおける生物的役割についてはなお明らかでなく,妊卵の着床部位の選択には線毛細胞の数や分布密度のみならず,内膜の線毛の運動性と内膜の妊卵に対する生物学的反応等が関与していると推察された.

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