母児垂直感染予防のためのワクチン

書誌事項

タイトル別名
  • The Impact of Vaccines to Prevent Vertically Transmitted Infection

抄録

WHOにおけるワクチン関連疾患は「preventable disease=予防可能な疾患」と表記されている.しかし風疹はワクチン関連疾患に分類されるものの,本邦では2012年に大流行し,2013年の風疹感染者は14,357人にまで上り,先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome;CRS)を合併した児も32人出生した.日本における風疹ワクチンの歴史的背景が今回の大流行にかかわっている.<br>風疹ワクチンの接種は1976年より定期接種として開始され,当初は中学生女子に限定されていた.1989年より男女に三種混合ワクチン(MMR)の接種が始まったものの,無菌性髄膜炎の発生により1993年にいったん中止された.1995年以降は男女ともに個別接種がされたが,ワクチン接種をすり抜けた20~40歳代の成人が風疹抗体をもたず,今回の大流行に大きく影響したと考えられる.妊娠初期に風疹に罹患した場合,かなり高率で先天性白内障,難聴,心奇形をもつCRSを発症するため,ワクチンによる抗体確保することでの集団免疫の重要性を確認する.<br>B型肝炎は輸血後肝炎がほぼ消滅した後,母児垂直感染をいかに予防するかが注目された.2013年にB型肝炎ワクチンと免疫グロブリンの接種方法が変更され,より効果的な母児感染予防を試みている.<br>インフルエンザは妊娠中に接種するワクチンとして最大のものといえる.妊娠全期間を通じて有益性投与を行うことができ,免疫寛容にある妊婦におけるインフルエンザワクチンの接種の重要性は新型インフルエンザ流行の際にも痛感された.<br>最後に現在開発中のワクチンとしてサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)ワクチンがある.妊娠中に初感染を起こすと,児に難聴,精神発達障害などをきたす先天性CMV感染症を起こす.以前はCMV抗体の保有率は90%程であったものの,現在は衛生的な改善で抗体保有率が65%にまで低下しており,妊娠中の初感染のリスクは高い.現在ワクチンは臨床治験第2段階であり,臨床応用にはまだ時間を要する.周産期にかかわるワクチンの歴史と現在の状況を確認し,今後の感染予防に役立てていく.

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