フッ化物含有ホームブリーチング剤の歯質脱灰抑制能

DOI
  • 實吉 安正
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所
  • 飯塚 純子
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所
  • 岡田 周策
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所
  • 長谷川 晴彦
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所
  • 倉持 江里香
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所
  • 向井 義晴
    神奈川歯科大学大学院歯学研究科 う蝕制御修復学講座 神奈川歯科大学歯科再生医学研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Prevention of Enamel Demineralization by Fluoride Containing Home Bleaching Agents

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抄録

 目的 : ブリーチングは一般的な歯科治療の一つとして普及してきている. 本研究では, フッ化物含有ホームブリーチング剤のエナメル質および象牙質脱灰抑制能を調べることにより, 齲蝕予防材料としての有効性を検討した. <br> 材料と方法 : ウシ切歯からエナメル質および象牙質試料を切り出し, 耐酸性バーニッシュにより2×3mmの被験面を規定した. これらの試料を以下の4群に分けた. なお, 各群の試料数は6とした. 1. CONT (Control : 非処理), 2. HSU (Shofu HiLite Shade Up : 10%過酸化尿素), 3. OER (Ultradent Opalescence Regular : 10%過酸化尿素, 2.45 ppmF), 4. OPF (Ultradent Opalescence PF : 10%過酸化尿素, 1,220 ppmF, 硝酸カリウム) 各ホームブリーチング剤を被験面に適用, 37°C, 100%湿度下で2時間静置した後, 流水下で歯ブラシを用いて30秒間洗浄, さらに脱イオン水で30秒間水洗した. その後, 試料を脱灰溶液 (1.5mmol/l CaCl2, 0.9mmol/l KH2PO4, 50mmol/l酢酸, エナメル質用は0.1 ppmF含有pH 4.6, 象牙質用は0.2 ppmF含有pH 5.0) に37°Cで22時間浸漬した. 本サイクルを4日間繰り返した後, エナメル質からは150μm, 象牙質からは300μmの切片を被験面に垂直に切り出し, トランスバーサルマイクロラジオグラフィーで得られた画像からミネラルプロファイル, 病巣深度 (Ld) およびミネラル喪失量 (IML) を算出した. また, EPMAによりエナメル質病巣中のCaおよびFの分布を測定した. <br> 結果 : エナメル質のCONTは高度に脱灰された表層下病巣を示し, HSUにおいても表層下脱灰病巣が確認された. OERは4つの明瞭なミネラルピークを有する表層下脱灰病巣を示した. HSUとOERのIMLは, CONTと比較し有意に低い値であった (ANOVA, Tukey's, p<0.05). OPFは軽度に脱灰されたミネラルプロファイルを示し, IMLはほかのグループに比較し有意に低い値であった. 象牙質では, CONT, HSU, OERともに類似したミネラルプロファイルを示した. また, OERにおいては4つのミネラルピークが観察されたが, エナメル質に比較して不明瞭であった. 一方, OPFのプロファイルはほかの3群とは明らかに異なっており, 約50%のミネラルボリュームを有するピークを有し, IMLもほかの3群に比較し有意に低い値であった. 病巣深度に関しては, エナメル質および象牙質ともにCONT, OPF群間における有意差は認められなかった. エナメル質病巣におけるEPMAでは, ミネラルピークに一致してCaが高く検出された. <br> 結論 : フッ化物含有ホームブリーチング剤はエナメル質および象牙質の脱灰を抑制することから, 齲蝕予防手段の一つとして利用できる可能性が示唆された.

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