医薬品開発と安全性薬理試験

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タイトル別名
  • Drug development and safety pharmacology study

抄録

毒性試験が主として「器質的変化」を評価するのに対し,安全性薬理試験では主に「機能的変化」に基づく影響を評価するものである。安全性薬理という言葉は比較的新しく,従来は一般薬理試験として主効果以外の薬理作用を検討するものであったが,毒性試験あるいは臨床試験でみられた有害な作用機序を評価し明らかにし,副作用を予見することを目的としている。安全性薬理試験は生命維持機能に重要な影響を及ぼす器官系に対する影響を中心に評価するものであるが,特に心血管系評価には重点が置かれている。この背景には抗アレルギー薬のterfenadine等によるTorsade de Pointes (TdP)という致死性不整脈発現による死亡事故が大きく影響している。米国ではこの事故により1980年代後半から1990年代前半で125例の死亡が報告され,terfenadineは1998年に市場からの撤退することになった。TdPの発現には心電図QT間隔の延長が関与していることが明らかになり,この副作用を検出するための試験法の開発が相次いだ。安全性薬理試験ガイドライン(ICH S7A)を補完する目的で「ヒト医薬品のQT間隔延長の潜在的可能性に関する非臨床評価」(ICH S7B)ガイドラインが,そしてヒトでのリスク評価のために「非抗不整脈薬のQT/QTc間隔の延長及び催不整脈作用の潜在的可能性の臨床評価」(ICH E14)ガイドラインが日米欧三極で合意されている。この大きな流れは,創薬段階のスクリーニング試験から臨床試験のあり方まで影響を及ぼすことになった。より有効な薬をより安全に,より早く患者さんに届けるために,安全性薬理試験は不可欠となっている。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205546568320
  • NII論文ID
    130005008627
  • DOI
    10.14869/toxpt.39.1.0.ms1-7.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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