医薬品開発における眼毒性評価の課題

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タイトル別名
  • Issues of ocular toxicity assessment in drug development

抄録

ヒトは外部環境の情報入力の約80%を視覚に頼っており、その障害はQOLに大きく影響し、過去にはクロロキン、キノホルムなどによる眼毒性が大きな社会問題となった。毒性試験ガイドラインには眼検査の実施が記載されており、医薬品開発においては各製薬会社が眼毒性の評価に細心の注意を払っているところである。国内においても、比較眼科学会の認定制度が整備され、検査実施者の水準は確実に向上した。<br>一方、眼には、涙膜の性質、角膜内皮細胞の生理、房水排泄機構、桿体・錐体の比率、黄斑・中心窩の有無、網膜血管の走行、タペタムの有無、視交差における視神経線維の交換比率などに、ヒトと各種実験動物の間で様々な種差が知られている。眼毒性の評価にあたっては、これらを含め、眼の解剖・生理・生化学・発生・病態・病理などに広くかつ深い知識が要求される。特に病態に対する知識を書いた場合、眼毒性所見の臨床的重要性に対する判断が困難となり、リスク・ベネフィットバランスが評価できない。<br>国内の既承認薬の眼毒性事例を把握するために、公開承認審査情報を調査した。その結果、頻度は高くないが、毒性試験において、主に水晶体・網膜に眼毒性所見の事例が認められた。これらを精査すると会社間で眼所見の記録方法にレベルの相違があることが明らかになった。他器官の所見の記載と同様、眼毒性所見においても、病変が具体的に描写されていないと、臨床でのモニターが困難となり、リスクマネージメントの用をなさない。眼毒性が生じた場合の追加眼毒性試験の実施においても、眼の生理機能の知識が極めて重要である。さらには、臨床での検査技術に対する知識からは、バイオマーカーとしての臨床モニターの方法の提案が期待される。<br>本発表では、眼毒性評価における課題を明らかにして、リスクを低減しかつ効率的な医薬品開発を実現できる眼毒性評価の方向性について考察したい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523351936
  • NII論文ID
    130005008679
  • DOI
    10.14869/toxpt.39.1.0.o-50.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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