単層カーボンナノチューブが種々のヒト呼吸器由来細胞のストレス関連遺伝子に及ぼす影響
書誌事項
- タイトル別名
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- Single-walled carbon nanotube affects stress-responsive genes expressed in human respiratory tract cells
抄録
カーボンナノチューブ(CNT)は電子工学や医療の分野での応用が期待されている一方で、人体に及ぼす影響は未だ不明な点が多い。CNTはグラフェンシートを筒状に巻いた構造であり、直径や長さがアスベストと類似していることからもCNTが呼吸器由来細胞に及ぼす影響を明らかにすることは重要である。そこで本実験では単層CNT(SWCNT)が正常ヒト気管支上皮細胞(NHBE)、疾患気管支上皮細胞(DHBE)および呼吸器由来がん細胞のストレス関連遺伝子に及ぼす影響について検討し、SWCNTに対する各細胞の応答性の違いを明らかにすることを目的とした。初代培養細胞であるNHBEおよび肺の炎症性疾患患者由来のDHBE(喘息および慢性閉塞性肺疾患)、またヒト呼吸器由来がん細胞であるA549およびFaDuに対して、NiとYを金属触媒としアーク放電法により製造したSWCNT(0.1、1.0 mg/mL)を6時間暴露させた後、9種類のストレス関連遺伝子の発現変動を検討した。SWCNT暴露によりinterleukin-6は全ての細胞で有意に減少したが、metallothionein 2Aやtumor necrosis factor-αは一部の細胞で有意な減少が認められた。アポトーシスに関与するBCL2-associated X proteinやBCL2-like 1、細胞周期に関与するcyclin D1、薬物代謝に関与するcytochrome P450 1A1およびcytochrome P450 oxidoreductaseの発現に及ぼす影響について検討したが、NHBEにおいてSWCNTはこれら遺伝子発現を減少させる傾向を示した。さらに、初代培養細胞ではがん細胞と比較してより大きな影響が認められた。本研究ではSWCNTが正常および炎症性疾患患者由来の初代培養細胞におけるストレス関連遺伝子の発現を減少させる傾向が認められ、さらにその変動は細胞により異なることを明らかにした。SWCNT暴露により外来異物によるストレスに対して肺の応答性が変動する可能性が考えられる。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 39.1 (0), P-142-, 2012
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680523005952
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- NII論文ID
- 130005008741
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可