マウスにおける多層カーボンナノチューブの催奇形性について

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  • Teratogenicity of multi-wall carbon nanotube in ICR mice

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抄録

ナノマテリアルは、電子工学製品・医薬品・化粧品等への応用で注目され、多種多様なナノマテリアルが開発・生産されているが、その健康影響について、科学的に充分に検討されていない部分がある。この状況に鑑み、当センターは、ナノマテリアルの健康影響評価の一端を担っており、これまでに、腹腔内投与した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)がラットに中皮腫を誘発することを報告した。本研究は、当センターにおけるナノマテリアル安全性評価の一環として、MWCNTの催奇形性について試験を行った。<br> MWCNT(三井MWCNT-7、Lot No. 060125-01k)を2%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に超音波ソニケーターを用いて懸濁し、妊娠9日目のICRマウスに2、3、4および5mg/kg体重で腹腔内投与、あるいは、3、4および5mg/kg体重で気管内投与した。<br> 腹腔内投与実験では、4および5mg/kg群で早期死胚数の増加および生存胎仔の減少が見られ、すべての投与群で用量に相関して、四肢減形成、口蓋裂、脊椎や肋骨の癒合などの奇形が発生した。ヒトでの暴露経路を想定して行った気管内投与実験では、4および5mg/kg群で、四肢減形成、脊椎や肋骨の癒合など、腹腔内投与の場合と同様の奇形が発生したが、3 mg/kg群では統計学上有意な奇形が発生が見られなかった。<br> MWCNTのヒト暴露量はいまだ明らかになっていないが、職業現場における暴露量を0.58-6.20 μg/kg体重/日と推定した報告があり、本研究の気管内投与催奇形試験で得られた最大無毒性量(NOAEL)の3 mg/kg体重は、この値の480-5170倍にあたる。以上より、MWCNTは一定の条件下で催奇形性を発揮することが判明したが、MWCNTのヒトに対する直接的な催奇形リスクを直ちに懸念する必要はないものと判断する。

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