創薬における肝障害評価と今後の展望

DOI
  • 西矢 剛淑
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所
  • 藤本 和則
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所
  • 森 和彦
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所
  • 神藤 敏正
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所
  • 矢本 敬
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所
  • 三分一所 厚司
    第一三共株式会社 研究開発本部 安全性研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of hepatotoxicity in process of drug discovery and its future perspective

抄録

医薬品開発において、肝障害が原因で開発が中止されるケースは少なくなく、上市後に重大な肝障害で販売中止あるいは使用制限される医薬品も減少していない。社会要請に応じた安全性の厳格化や医療モニターの整備も一因であるが、医薬品開発における肝障害評価の予測精度が未だ十分ではないことは明らかである。予測が困難な特異体質性肝障害(IDILI) では、danger 仮説に従い、ヒト肝細胞での共有結合生成量とヒト肝障害の関連性がレトロスベクティブに解析され、臨床投与量を加味したときに両者が比較的良い相関を示すことが報告されている。現在では、創薬スクリーニングの段階で共有結合試験が広く実施されている。しかし、本試験系の予測精度は十分ではなく、肝障害メカニズムに共有結合以外の関与も考えられることから、新たな評価系および作業仮説が求められている。すなわち、肝障害に至る過程で薬物が生体 、細胞および分子レベルでどのような影響を示すか、それを如何に解釈するかが重要である。我々は、グルタチオン合成酵素阻害剤を前処置したラット肝臓 (in vivo) あるいはラット培養肝細胞が、ヒトで肝障害を誘起する薬物に対して高い感受性を示すことを報告している。また、ヒト初代培養肝細胞を用いたhigh content analysisにおいてIDILIを惹起する多くの薬物がミトコンドリア毒性を示すこと、ラットin vivo薬剤性肝障害モデルにおいてIL-17などのサイトカインが関与することが報告されている。したがって、グルタチオン低下や酸化ストレス、ミトコンドリア毒性および免疫応答は肝障害の因子と考えられる。ただし、最新の知見に基づいても、これらの因子でヒト肝障害をすべて説明することはできない。発表では、他の因子の可能性にも触れ、薬剤性肝障害評価の展望を創薬に関わる非臨床安全性研究者の立場から述べたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205545441664
  • NII論文ID
    130005008973
  • DOI
    10.14869/toxpt.39.1.0.s14-2.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ