人工膝関節抜去後に杖歩行獲得可能となった1症例

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  • ―坐骨支持付き長下肢装具を使用した経験―

抄録

【はじめに】人工膝関節置換術(以下TKA)は、高い除痛効果があり、術後療法が短期のため盛んに行なわれるようになったが一方で、術後感染症などの合併症もみられる。今回、二度にわたるTKA施行後の感染により人工膝関節を抜去、再置換困難であった症例に対して坐骨支持付き長下肢装具を作製、杖歩行が可能となった症例を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】78歳、女性 診断名:右人工膝関節抜去術後 合併症:左変形性膝関節症、高血圧、狭心症 、精神活動において痴呆(HDS-R13/30)の疑いあり。<BR>【現病歴】平成10年頃より両膝関節痛出現。平成11年2月右TKA施行するも同部感染があり、11月人工膝関節抜去。平成12年8月再置換術施行。平成15年11月頃より右膝に炎症所見出現。12月人工膝関節抜去。セメントビーズ挿入。3月セメントビーズ抜去。炎症も治まり平成16年5月19日リハビリテーション目的にて当院入院。<BR>【初期評価】ベッド上動作:自立、移乗:近位監視、MMT上肢:3~4、右膝伸展2、その他の下肢筋力3~3 レベル。右膝は非常に不安定であり、いずれの方向に関しても異常な可動性を生じ、支持性は全く認めなかった。<BR>【経過】平成16年5月20日理学療法開始。前院にて作製した大腿コルセット付き長下肢装具装着して立位歩行訓練施行。右膝の動揺は抑制可能であったものの、右下肢で全く荷重できない状態であった。平成16年6月18日坐骨支持付き長下肢装具作製。装具装着して荷重訓練、立位・歩行訓練、下肢筋力強化訓練等を施行。訓練開始後、徐々に右下肢での荷重も可能となり立位・歩行能力向上が認められた。9月1日屋内4点杖装具歩行近位監視レベル、屋外移動は車椅子レベルにて自宅退院。退院後も装具装着して自宅内を4点杖にて歩行されている。<BR>【考察およびまとめ】本症例は人工膝関節を抜去し、膝関節が存在しない状態であった。大腿コルセット付き長下肢装具装着して右膝の動揺を抑制し立位・歩行訓練を行なっていたが、右下肢での荷重ができない状態となっており、実用歩行の獲得は困難と考えられた。坐骨支持付き長下肢装具を作製したことで右膝を保護しながら右下肢で荷重を行なうことが可能となり、大殿筋・大腿四頭筋等の抗重力筋の筋力増強が図られ右下肢の支持性が向上した。また、左膝関節の負担を軽減でき、左膝の疼痛を生じることなく歩行訓練を施行できたことも杖歩行が可能となった要因のひとつと考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C0341-C0341, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565324672
  • NII論文ID
    130005012604
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.c0341.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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