完全対麻痺者のハイブリッド機能的電気刺激を用いた立位における姿勢動揺

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抄録

【目的】<BR>完全対麻痺者は、機能的電気刺激(FES)とハイブリッド装具を用いることで車椅子から立ち上がり、歩くことができる。われわれは、着脱の容易さや車椅子との併存性から内側股継手付き長下肢装具を用い、FESにより膝伸展が十分可能な例では膝継手のロックはフリーとしている。これにより対麻痺者の生活空間は、棚の上のものを取るなど拡大される。今回われわれは、完全対麻痺者のFES起立時における姿勢安定性を比較するため、上肢タスクの課題を与えて2種類の内側股継手を用いて比較した。<BR><BR>【対象および方法】<BR>対象は32歳のT8完全対麻痺で、経皮的埋込み電極を用いたFESと内側股継手付長下肢装具を併用したハイブリッドFES歩行を7年経験している。膝継手のロックをフリーとして2時間立位保持が可能で、手放し立位も可能である。本研究では内側股継手はWalkaboutとPrimewalkの2種類を、FES装置としてAkita Stimulator 3(バイオテック社製)を用いた。FESによる起立時の刺激筋は両側の傍脊柱筋、大殿筋、大腿四頭筋とし、刺激強度は立位アライメントがとれるように調節したが、刺激条件、動作条件下で変えなかった。被検者は床反力計上で立位を上肢支助なしで保持し、ペグボードの30cm横移動(ペグ動作)、皿の20cm棚上げ降ろし(皿動作)という2種類の上肢タスクを遂行した。この時の姿勢動揺を比較するために床反力計を用いて足圧中心を記録し、sway振幅とsway 移動距離を前後および左右で算出した。<BR><BR>【結果】<BR>上肢タスクなしに比べてペグ動作、皿動作でsway振幅とsway移動距離のいずれも大きい傾向にあった。しかし、WalkaboutとPrimewalkで比較しても両者に有意な差はなかった。<BR><BR>【考察】<BR>Walkaboutの股継手の位置は股関節の生理的位置よりも70mmも低く、下肢の自由度が減少する。これを補うためs才藤氏により開発されたのがPrimewalkである。このため、姿勢保持においてはPrimewalkが有利と思われたが、WalkaboutとPrimewalk間に差がなかった。この原因としては、1)移動と異なり、立位姿勢では両装具間の継手の動きが小さく差となって現れなかったこと、2)FESにより股関節や膝が終始安定していたことが挙げられる。今回の結果より、完全対麻痺者のハイブリッドFESを用いた起立動作再建において、いずれの内側股継手を用いても姿勢動揺に与える影響はほぼ同等であり、利用価値が高いと考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C1017-C1017, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報

  • CRID
    1390001205562971648
  • NII論文ID
    130005012793
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.c1017.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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