ラット脊髄血流におよぼす侵害性刺激の影響

DOI
  • 戸田 寛子
    国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 国際医療福祉大学基礎医学研究センター
  • 丸山 仁司
    国際医療福祉大学理学療法学科
  • 黒澤 美枝子
    国際医療福祉大学基礎医学研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • 刺激部位差とその機序の検討

抄録

【目的】リハビリテーションでは,触,圧,温熱,寒冷などの体性感覚刺激を加えることにより,組織血流の改善,筋緊張の改善,疼痛抑制などの効果を得ている.しかしこれらの科学的根拠は乏しい.したがって体性感覚刺激によって起こる各種反応並びにその機序を明らかにしていくことはリハビリテーションの基礎を確立することになる.我々はこれまで,皮膚への非侵害性刺激(Brushing)によりラットの脊髄血流が増加することを明らかにしてきた.そこで本研究では侵害性刺激であるPinching刺激による脊髄血流反応とその機序を検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】実験には麻酔した人工呼吸下のラットを用いた.脊髄血流の測定にはレーザードップラー法を用い,L4-6髄節の左側背側面にプローブを置いた.刺激には外科用鉗子を用い,同側(左)の後肢足蹠(HP:脊髄血流測定分節に入力する刺激)ならびに前肢足蹠(FP)を30秒間Pinchingした.また血流反応に影響する血圧を右頚動脈より測定した.そして血圧の効果を除外し,血管径の状態を検討するためにコンダクタンス(=BF/MAP)を指標とした.また血圧反応を含めた交感神経の影響を除外するため,交感神経α受容体遮断薬であるフェノキシベンザミンを静脈内投与し,交感神経の関与を検討した.さらに第1-2頚髄間で脊髄を切断したラットでも検討した.なお本研究は国際医療福祉大学動物実験研究倫理審査委員会の承認のもとに行った.<BR><BR>【結果】HPおよびFPへのPinching刺激によって脊髄血流は増加した.同時に血圧も増加した.血圧の増加に部位差は認められなかったが,脊髄血流の増加は,HP刺激の方が有意に大きかった.このときのコンダクタンスはFP刺激時のみ有意に減少していた.フェノキシベンザミン投与下および脊髄切断下では,血圧の反応は著しく減弱し,脊髄血流はHP刺激によってのみ増加した.またコンダクタンスもHP刺激時のみ有意に増加した.<BR><BR>【考察】脊髄無傷の場合,両刺激共に血圧の増加反応が同じであったことから,脊髄血流反応の違いには血管径が関与していると考えられた.脊髄無傷の場合,FPを刺激すると,上位中枢を介して交感神経が脊髄血管を収縮させたと考えられた.しかし,結果的には収縮による血流減少よりも,血圧による効果が勝り,脊髄血流が増加したことが示唆された.一方HPを刺激すると,FP刺激時と同様の反応のほか,脊髄レベルで拡張因子が働くことが示唆され,血管径が変化しなかったと考えられた.そのためHP刺激の方が,血圧の影響を大きく受け,脊髄血流の反応が大きかったと考えられた.<BR><BR>【まとめ】FPへのPinching刺激によって血圧依存性に脊髄血流が増加した.一方,HPへのPinching刺激によって起こる脊髄血流の増加には,血圧依存性の機序のほかに,脊髄分節性の拡張因子を介した機序が関与していると考えられた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0464-A0464, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539989120
  • NII論文ID
    130005013314
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0464.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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