内側縦アーチの下降メカニズム

DOI
  • 壇 順司
    九州中央リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 国中 優治
    九州中央リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 高濱 照
    九州中央リハビリテーション学院 理学療法学科

抄録

【目的】通常,足関節中間位では,内側縦アーチ(以下アーチ)は下降しにくい.脛骨を母趾MP関節方向に向かって傾斜させると,荷重をかけやすくアーチは容易に下降する.そのメカニズムを,遺体を用いて解剖学的に検証したので報告する.<BR>【対象】熊本大学形態構築学分野の遺体で,右足8関節を使用した.1)1肢は足関節,足部の関節包靭帯のみの標本を作製した.2)7肢はショパール(以下CP)関節を展開し距骨の舟状骨関節面(以下距骨関節面)と踵骨の立方骨関節面(以下踵骨関節面)を観察できるようした.各標本は足関節周囲の筋腱をリリースし,可動性を確保した.可動域は背屈24°±5.5,底屈52°±5.7,内反54.6°±4.6,外反24°±4.2であった.<BR>【方法】1)脛骨を母趾MP関節方向に向かって傾斜させ,アーチの下降に関与する関節とその可動方向を確認した.2)を前額面から観察し,足部を外反位・内反位で,距骨関節面・踵骨関節面の中央を通る線と水平面のなす角(以下CP関節角度)を測定した.またCP関節の関節面の形状と各肢位での関節面の向きを調べその形状から,距骨・踵骨関節面の滑走軸を推定し,CP関節に荷重と同じ上下方向のストレスを与え関節が上下に滑走し始めるCP関節角度を測定した.<BR>【結果】1)アーチ下降に主に関与する関節は,距骨下(以下ST)関節とCP関節であった.矢状面からみて,ST関節では,距骨外側突起が足根洞にはまり込み前下方に移動した.踵立方関節では,踵骨に対して立方骨が上方に移動した.同時に距舟関節では,舟状骨が距骨の上に乗り上がるように移動した.2)CP関節の角度は,外反位(24°±4.2)では36.5°±1.8,内反位(54.6°±4.6)では78.5°±3.4であった.踵骨関節面は凹面で立方骨踵骨関節面は凸面であり,距骨関節面は凸面で舟状骨距骨関節面は凹面であった.外反位では距骨・踵骨関節面向きは水平に近づき,両関節面の滑走軸は平行となった.内反位では垂直方向に近づき,滑走軸は平行にはならなかった.上下方向のストレス時,CP関節の滑走限界角度は46.8°±3.6であった. <BR>【考察】アーチを下降させるには,CP関節を約47°以下にし,上下方向に滑走可能にする必要がある.それは足部を外反位にすることで,距・踵骨関節面の滑走軸が平行となり,CP関節角度が水平に近づき,関節面の凹凸が解消される方向となり滑走可能な状態になるからである.逆に内反位では,距・踵関節面の滑走軸が平行でなくなり,CP関節角度が垂直方向に近づき,関節面の凹凸が滑走を制限する方向となるためアーチは下降することはない.一般的にknee inの動作はあまり良くないとされ,膝とつま先が一致するような指導をされることが多いが,この時足部は内反方向となり,安定性は損なわれる.脛骨が母趾MP関節に向かって傾斜する方向は,距骨下関節の形状から,足部を安定させるために最も適した方向であると考えられる.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0984-C0984, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544748800
  • NII論文ID
    130005014099
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0984.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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