重度内反尖足を有する脳卒中片麻痺患者の装具療法

DOI
  • 今村 純平
    医療法人かぶとやま会久留米リハビリテーション病院リハビリテーション科

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Other Title
  • 一症例を通して

Abstract

【はじめに】<BR> 脳卒中後遺症による内反尖足に対する装具療法は、両側金属支柱式短下肢装具(以下、金属AFO)が多く用いられる。今回、重度内反尖足を有する脳卒中片麻痺者の金属AFOをプラスチック製短下肢装具(以下、PAFO)に変更したところ、良好な結果を得たので報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 症例:40歳代、女性。傷病名:脳内出血(H16.7) 障害名:右片麻痺。現況:杖歩行自立し自宅退院後、週3回当院デイケア利用中。家族構成:5人家族。職業:主婦。<BR>【理学療法評価】<BR> コミュニケーション:良好。Br.stage:V-VI-III。感覚:ほぼ正常。ROM:右足関節背屈-5°、外反0°。筋力:非麻痺側5レベル。筋緊張(Modified Ashworth Scale):3(右足関節背屈時)。歩行:金属AFO(Tストラップ付)を装着し一本杖歩行自立。<BR>【問題点】<BR> #1.Tストラップの外果部圧迫による歩行時疼痛 #2.疼痛による装具の長時間装着困難 #3.#2による活動量低下 #4.歩行時の足底外側接地 #5.#4に起因した歩行時の右膝関節内側部痛<BR>【装具療法アプローチ】<BR> 内反尖足を下腿遠位部から矯正する目的で、トリミングの際に装具下腿外側部を広く残し、外果部は除圧のため回避した。足趾内転を防ぐため内壁を母趾IP関節まで延長した。外果部の疼痛は軽減したが、下腿遠位外側に圧痛が出現したため、カフ内側にパットを取り付け除圧した。背屈制限に対して装具の踵を補高し、非麻痺側の靴も補高した。屋内では非麻痺側に足底の厚い市販のスリッパを履き、脚長差を解消した。<BR>【結果】<BR> 外果部疼痛は消失し、1日を通しての装具装着が可能となった。立位・歩行時のtoe-inが改善され、歩行時の足底外側接地は消失し踵接地がみられた。また、10m歩行時間は短縮し、歩数も減少した。現在(3ヶ月経過)、右膝関節内側部痛の訴えはない。<BR>【考察】<BR> 金属AFOの底屈制動力の強さは臨床場面でも感じるところであるが、内反の強い本症例にとっては、支柱と下腿間のクリアランスの存在により、下腿から足部にかけて外側へ偏移し、Tストラップによる外果部の局所的な圧迫を引き起こしていたと考える。今回作成したPAFOは、外側に偏移していた下腿を矯正することで、足底接地を改善させることができた。また、外果部一点で受けていた圧を、下腿外側部という面で受けることで疼痛軽減につながったと考える。さらに、足底接地不良は右膝関節痛を誘発し、麻痺側立脚時間の短縮を招いていたと考えられ、PAFO装着による歩行時間の短縮と歩数の減少は、麻痺側立脚時間が延長したことによる歩幅の増加が要因と考えられる。<BR> 本症例は、自宅・屋外ともに同じ金属AFOを使用されていたため、症例の生活スタイルから考えてもPAFOへの変更は有意義であったと考える。また、長時間の装具装着は変形予防や持続的伸張による痙縮軽減などの効果も期待できるため、装着感を阻害する因子への対応は重要と考える。<BR><BR>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543962624
  • NII Article ID
    130005016072
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e0724.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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