目標を定めたステップ動作時の足部接地位置の誤差 第2報

DOI
  • 檀辻 雅広
    協和マリナホスピタル リハビリテーション科
  • 廣川 円香
    協和マリナホスピタル リハビリテーション科
  • 水田 潤史
    協和マリナホスピタル リハビリテーション科
  • 坂部 幸治
    協和マリナホスピタル リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • 踵骨後端部が正確に接地できる位置はどこか?

抄録

【目的】日常の臨床場面でステップ練習を行う際に,理学療法士が床面に示した目標に足尖や踵部を合わせるように指示することがあるが,実際に振り出された足部の位置は目標と隔たりがあることが多い。昨年度の本学会で,目標点に対するステップ時の接地位置について,第1中足指節間関節部,第5中足指節間関節部が母趾先端部,踵骨後端部よりも目標点に近い位置に接地できること,踵骨後端部の接地位置はy軸上約4cmマイナス方向にあることを報告した。しかし,実際のステップ練習は,歩行時の踵接地を意識して行うことが多いため第1,5中足指節間関節を指標とすることは現実的ではないと思われる。<BR> そこで今回は,踵骨後端部が目標点に正確に接地できる位置を知ることを目的に,先行研究の結果をもとに調査分析したので報告する。<BR>【方法】対象は,健常成人18名(男性9名,女性9名)とした。平均年齢は28.5±6.3歳,平均身長は165.7±10.9cmであった。<BR> 測定方法は,静止立位から床面の方眼紙上に示した目標点に向かって一歩前方にステップ動作を行い,踵骨後端部から目標点までの誤差を計測した。静止立位は,歩隔を10cm,足角7度の開脚位とした。床面に示す目標点は,ステップ側の踵骨後端から垂直延長線上に先行研究で用いた身長×0.37の基準点からy軸上でマイナス4cmをA点,以下マイナス方向に4cm刻みにB点,C点,D点,E点,F点として目印をつけた。<BR> 測定手順は先行研究と同様の手順とし,1)被験者は指示された目標点を5秒間注視する。2)足下を視覚遮断し,踵後端部を目標点に合わすようにステップ動作を行う。3)目標点からの誤差を計測後,静止立位姿勢に戻る,とした。試行はA点からF点の目標点ごとに5回,順序は無作為で行った。また,被験者には結果のフィードバックを行わないこととした。<BR> 接地位置の計測は,各目標を原点とした座標軸からx軸y軸の値を読み取り,目標点からの距離を算定した。さらに,接地位置を座標平面から象限に分類し,その分布を算定した。統計分析は,目標点から接地位置までの距離を一元配置分散分析,座標平面の分布は2サンプル比率検定を用い,有意水準を5%未満として比較検討した。<BR>【説明と同意】被験者には個々に本研究の目的と方法を書面で説明し同意を得た。<BR>【結果】各目標点から接地位置までのx軸方向の平均値はA点-0.6±1.8cm,B点-0.5±1.7cm,C点-0.5±1.8cm,D点-0.6±1.7cm,E点-0.7±1.5cm,F点-0.8±1.5cmであった。y軸方向の平均値はA点-3.4±4.8cm,B点-4.4±4.7cm,C点-3.4±4.2cm,D点-3.3±4.0cm,E点-2.7±4.8cm,F点-2.8±4.6cmであり,x軸y軸ともに各目標点との間には有意差は見られなかった。<BR> 各目標点から接地位置までの誤差距離は,A点5.6±2.7cm,B点5.8±3.2cm,C点5.1±2.7cm,D点4.8±2.7cm,E点4.9±2.7cm,F点5.0±2.7cmであり,各目標点間の誤差距離に有意差は見られなかった。<BR> 各目標点の接地位置の分布は,A点のx軸+方向32%,-方向68%,y軸+方向23%,-方向74%,B点のx軸+方向35%,-方向66%,y軸+方向21%,-方向79%,C点のx軸+方向32%,-方向68%,y軸+方向20%,-方向80%,D点のx軸+方向33%,-方向67%,y軸+方向19%,-方向81%,E点のx軸+方向29%,-方向71%,y軸+方向30%,-方向70%,F点のx軸+方向26%,-方向74%,y軸+方向23%,-方向77%であった。各目標点の接地位置は,x軸y軸ともに-方向に偏っていた(p<0.01)。<BR>【考察】先行研究では踵骨後端部の接地誤差が目標点よりも約4cm後方であることが示されたことから,今回は目標点を基準点から4cmずつを後方にずらして,正しく接地できる場所を探ろうと試みた。<BR> その結果,各目標点ともに座標軸上ではy軸のマイナス方向に接地し,それぞれに有意差を認めなかった。また,各目標点からの誤差距離もそれぞれに有意差を認めなかった。さらに,座標平面上での接地の方向は,各目標点のx軸y軸ともにマイナス方向に接地していた。<BR> これらのこと,踵骨後端を目標に合わせるようなステップ動作では,目標点をどこに置いても求める位置に正確に接地することはできず,またその時の誤差距離と方向の偏りは,目標点の位置に関わらずほぼ一致することが示されたと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】今後は,ステップ動作練習の際に,求める位置に接地させるにはどのようにすればいいのかをさらに検討する必要があるのと同時に,年齢や疾患の有無により誤差が変動するかどうかを調査する必要があると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), AbPI1114-AbPI1114, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548251648
  • NII論文ID
    130005016529
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.abpi1114.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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