運動器の構成組織の微細構造

DOI
  • 佐藤 江利子
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 加藤 祐子
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 千葉 香菜子
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 永井 莉沙
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 宮本 いづみ
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 吉田 恵美
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 小野部 純
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 近藤 尚武
    東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • 膠原線維の太さに着目して

抄録

【目的】本研究では、緻密性線維性結合組織の代表である腱に注目し,その主構成要素で力学的支持基盤である膠原線維の微細構造,特にその太さの分布を調べることを目的とした。その分布が同一腱での部位による差があるかどうかを精査し,膠原線維の太さを規定する要因の検討を行った。<BR>【方法】マウスの前腕伸筋・屈筋の腱を摘出し,これらの試料を細切にし,2.5%グルタールアルデヒドで2時間,1%四酸化オスミウムで2時間固定した。次いで50から90%濃度上昇系列のエタノールに各5分間浸漬した後,100%エタノールに1時間浸漬し脱水した。その後プロピレンオキシドに15分間浸漬させてから,エポン樹脂混合に半日浸漬した後に60度恒温槽内で一晩かけて重合包埋した。筋腱移行部のみ細切せずに30%ショ糖溶液に一晩浸漬させた後で,-20度のクリオスタット内で20&micro;m厚の凍結切片を作成した。凍結切片はpoly-L-lysine処理の透明プラスチック薄板に貼り付け,細切試料と同様の処理を通してエポン樹脂に平板包埋した。包埋した試料を実体顕微鏡下でトリミングし,目的とする試料部位を露出させ,ウルトラミクロトームでその部の超薄切片(80-100nm)を得た。超薄切片を銅製微小グリッドに貼付し,ウランと鉛の電子染色を施し,電子顕微鏡にて観察した。観察した像を撮影し,フィルム現像・定着により永久画像として得て,紙面にプリントした。腱のコラーゲンの太さの測定は,紙面上にて目盛ルーペにて計測した。<BR>【説明と同意】東北大学医学部において同大学実験動物倫理規定に基づいて実験承認され,全身環流固定済みの成熟雄マウスの非運動器を摘出したものを供与されたものを使用した。<BR>【結果】同一腱内部にて筋腱移行部,芯部,辺縁部の3部で,各々500個のサンプルを取り膠原線維の最大径を接眼マイクロメーターで計測した。すべての線維を最大径にて計測し,出現頻度を基に,膠原線維を大径(200nm以上),中間径(121nm~199nm),小径(120nm以下)の3群に分けた。腱の芯部と辺縁部では大・中間・小径3群から成るが,筋腱移行部では小径の群のみであった。また,芯部と辺縁部での3群の線維の出現相対比率を調べると,芯部では大径線維が中・小径線維に比して多数を占めるが,辺縁部では小径・中間径線維が多く,大径線維は少数であった。一方,膠原線維の生成責任細胞である腱細胞の近傍に3群の膠原線維のいずれかが特に多いという傾向は芯部と辺縁部いずれでも認められなかった。<BR>【考察】成書によると,腱の膠原線維は腱細胞が産生するプロコラーゲンが素で形成される。腱細胞から,開口放出によりトロポコラーゲンが分泌され,長軸・横軸方向に重合・集積して成長する。この生成機構に鑑みれば,線維成長の初期は小径線維が出来,ある程度の時間経過で中間・大径線維へと線維成長が進み,最終的に分解代謝されている可能性が高い。そして,その経過のどこかの段階で線維の成長と代謝との定常状態が維持されることによって,各部位の膠原線維の太さが確定すると考えられる。現在は,その成長と代謝の制御要因については未だ解明されていない。膠原線維が小径から中間径さらに大径線維へ成長すると仮定すると,今回の計測にて大径線維が芯部では多数で,辺縁部では少数であることから,膠原線維の成長が腱の辺縁部で芯部より活発であり,成長済みの大径線維は芯部に移動する可能性がある。筋腱移行部では小径線維のみが観察されたことから,この部の膠原線維の成長と代謝は比較的早期に定常状態となり,腱が筋膜へ付着・係留する際の接合面積を増大させている可能性が考えられる。また,腱細胞の近傍には大・中間・小径の膠原線維のうちで小径線維が特に多いという傾向は見出されなかった。以上のことより膠原線維が小・中間・大径の線維へと順に成長するという仮定は必ずしも万全ではなく,3群の線維各々が独自の存在である可能性も否定できない。膠原線維の成長・代謝の規定要因として,筋伸張や弛緩に伴う腱の長軸方向への負荷が第一に考えられる。しかし,今回の計測により,同一腱においてその辺縁部と芯部および筋腱移行部で大・中間・小径線維の出現頻度が異なることが判明したため,長軸方向への負荷以外の要因も作用している可能性が示唆される。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は、膠原線維の太さの分布を調べることを目的とした。膠原線維は腱の構成主成分であり、理学療法士が多く関わる整形疾患や脳血管疾患などによる関節拘縮等の基礎研究として有用であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), AbPI2002-AbPI2002, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548264320
  • NII論文ID
    130005016542
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.abpi2002.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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