超音波画像診断装置を用いた膝窩筋の観察

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  • 機能的特徴の検討

抄録

【目的】膝窩筋の主な機能的特徴では,膝関節屈曲,下腿内旋作用が広く認識されている.しかし過去の報告では,下腿内旋作用について多くの報告があるが,膝関節屈曲作用に関して統一した見解が得られていない.先行研究では,検体の大腿骨側の付着部が屈伸軸の前方に位置していることから膝関節伸展に作用することが報告されている.また針筋電図を用いた研究では,膝関節伸展時に膝窩筋の活動が確認されている(Ann-Katrin 2008).一方では,検体を使った研究から膝関節屈曲伸展のモーメントアームを計測し,屈伸作用がほとんどないことが報告されている(William 1997).<BR>また,屈伸作用同様,膝窩筋の解剖学的特徴の報告にもばらつきが多い.検体を用い膝窩筋の外側半月板への付着を調査したところ,95%が付着すると報告されている(Feipel 2003).一方,検体の膝窩筋の55%で外側半月板に付着し,45%で付着しないという報告もある(Alfred 1989).<BR> このように膝窩筋の機能や解剖学的特徴についてまだまだ未知な部分も多く,明確な知見は得られていない.また先行研究の多くが検体を用いており,生体を用いた研究はあまり行われていない.そこで本研究では,生体での観察に超音波画像診断装置(超音波)を用い,膝窩筋の安静時及び運動時の筋厚を観測することでその機能を調査することを目的とした.<BR>【方法】対象は,健常成人30名(年齢21.1±3.2歳,身長164.9±9.5cm, 体重60.0±9.9kg)とした.測定課題は,等尺性膝関節屈曲,伸展,下腿内旋運動とし,順不同にて行った.膝窩筋筋厚の測定には,超音波(東芝メディカルシステムFamio8)を用い,プローブにはリニア式電子スキャンプローブ(12.0MHz)を使用し,Bモードで撮影を行った.なおプローブの操作する検者は,特定の1名とし十分な練習を行った上,実施した.測定肢位は,ベッド上で腹臥位とし,膝関節屈曲45度とした.検者は,膝窩部(内側顆と外側顆を結んだ線)と平行にプローブを当て,画像を確認しながら膝窩動脈,腓骨頭を確認した.その後,腓骨頭から内下方へと膝窩筋の走行に沿ってプローブを動かし,膝窩筋筋厚を同定した.ヒラメ筋や腓腹筋との判別は,足関節の底屈(自動)を行い収縮がないことを確認した.なおプローブと皮膚との接触圧によって画像上の軟部組織が湾曲しないことを常時確認し測定を行った.膝窩筋を同定後,安静時の膝窩筋筋厚を記録し,その後,各課題(膝屈曲,伸展,下腿内旋)を実施し,その時の筋厚を記録した.記録した画像は,画像解析ソフトimage Jを用いて解析した.解析は,各画像に対して3回計測を行い,その平均値を使用した.なお筋厚の測定は,表層の筋膜と深層の筋膜の間で測定し,運動時は,その最大筋厚部を筋膜に垂直になるように測定した.データの処理は,1)対象者の中から無作為に10名を選出し,同日もう一度,膝窩筋筋厚の計測を行い,膝窩筋測定の級内相関係数(ICC)を算出した.2)各課題での筋厚と安静時の筋厚を比較し増加が認められた割合を算出し,膝窩筋の機能的特徴を考察した.なおICCの算出には,統計ソフトSPSSver13を用いた.<BR>【説明と同意】対象者には,本研究の主旨および方法,研究参加の有無によって不利益にならないことを十分に説明し,書面にて承諾を得た.なお本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した<BR>【結果】1)膝窩筋筋厚測定の級内相関係数ICC(1,1)=0.899であった.2)安静時の膝窩筋の筋厚の平均値は,9.4±1.6mmであった.筋厚の増加が認められた課題の割合は,30名中,下腿内旋時27名(90%),膝関節屈曲時21名(70%),伸展時9名(30%),どちらにも変化なし6名(20%)であった.<BR>【考察】膝窩筋の筋厚の測定における級内相関係数は,0.899であった.LandisらのICC判定基準より0.8以上は良好であったといえる.また他の部位での超音波測定の信頼性と比較しても同等の結果であったことから,膝窩筋の測定に超音波が有用であると考えられる.<BR>また機能的特徴では,下腿内旋において90%で筋厚の増加が認められた.つまり先行研究(Basmajian 1971)同様,下腿内旋作用が膝窩筋の主な機能であることが示唆された.加えて,膝関節屈伸作用おいては,その割合から膝窩筋の膝関節屈曲作用を支持する結果となった.しかし伸展においても30%,また変化なしが20%存在したことから,筋の走行が膝関節屈伸軸近くに存在し,屈曲伸展作用のどちらにしてもその機能は補助的な役割である可能性が考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】 膝窩筋の筋厚の測定において超音波は,有効な手段になりえる可能性がある.また下腿の内旋は,膝窩筋を活動させるための有効な運動であることが示唆された.<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), AbPI2057-AbPI2057, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548018304
  • NII論文ID
    130005016597
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.abpi2057.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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