骨粗鬆症を合併するRA患者の運動習慣と日常生活活動の実態調査

DOI
  • 阿部 敏彦
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム
  • 平石 志保
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム
  • 武智 政公
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム
  • 門田 三生
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム
  • 中村 江里
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム
  • 濱田 章弘
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーションルーム

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抄録

【目的】関節リウマチ(RAと略す)患者については、ステロイドによる、RAの病態による、閉経後による、不動性による骨粗鬆症等が合併しており、その比率は不明である。特にRAでは炎症関節近くの傍関節性骨粗鬆症の発症が特徴で、関節内の滑膜や骨にて産生されるサイトカイン(TNF-α等)が骨の吸収を促進する。今回、骨粗鬆症を認めるRA患者の骨強度を維持・増加するための運動指導における運動習慣や日常生活活動の実態特に家事動作を含めて調査したので報告する。<BR>【方法】対象は、当院外来通院中の50才以上のRA患者65人(全例女性)、平均年齢70.5±7.8才、平均罹病期間17.8±10.3年、骨塩量測定装置(DCS-600EX)による橈骨骨塩量測定にて若年成人の平均骨密度と比較して60%未満(YAMに対する相対値)とした。RAに対する薬物療法については、全例ステロイド剤の処方を受けている。<BR> 方法は、患者の身長及び体重測定、下肢機能としての10m歩行速度、日本薬効検定委員会によるADL得点(上下肢各5項目)ならびに応用的日常生活活動指標として用いられている改訂版Frenchay Activities Index(FAI)自己評価表にて調査した。ADL得点は各項目5段階(0点:普通にできる、4点:全くできない)合計0~40点で得点が高いほど身体障害度が高くなる。FAI自己評価表は、屋内家事5項目、屋外家事3項目、戸外活動4項目、趣味2項目、仕事1項目合計15項目4段階(0点:していない、3点:週に1回以上)0~45点で、得点が高いほど身体活動量が多いことを示す。<BR> 骨塩量測定によるYAMに対する相対値(%表現)にて3群(介護保険利用者の内のヘルパー利用者17名を除く48名)に分類、1群:40%未満7人、2群:40~50%未満12人、3群:50~60%未満29人となり各項目にて比較検討した。<BR>【説明と同意】本研究における身長、体重および骨塩量測定は、外来看護士によりまた10m歩行速度の計測、ADLならびにFAI自己評価は、外来リハ初診時または、3ヵ月毎の理学療法施行時にその内容を説明し患者の署名にて同意を得て介入している。<BR>【結果】骨塩量測定によるYAMに対する相対値の内訳は、20~30%未満3人、30~40%未満5人、40~50%未満14人、50~60%未満43人であった。<BR> YAMに対する相対値による3群比較では、平均年齢1群72.6歳、2群71.3歳、3群67.1歳、ADL(上肢)得点1群10、2群7.8、3群6.7、ADL(下肢)得点1群11.3、2群11.7、3群10.3、ADL(合計)得点 1群21.3、2群19.5、3群17.0、10m歩行速度(秒)では1群10.6、2群9.7、3群9.1であった。FAI自己評価表得点では、屋内家事項目で1群10.4、2群10.7、3群11.9と活動量が高くなったが、その他4項目並びに総合得点においては活動量が高くなる傾向は見られなかった。蜂須賀らによる一般中高年齢別FAI標準値(女性391名)では屋内家事の項目で、50代13.7、60代13.6、70代12.5と本研究3群全てにおいてより高値を示した。<BR>【考察】平成9年国民栄養調査によると、1週間に1回以上、1回30分以上運動している人の割合は、50代27%、60代32%、70代以上25%で、1日の平均歩数は、50代8000歩、60代6900歩、70代以上4600歩である。身体活動量を高めるためには歩行やスポーツである必要はなく買い物や家事動作や趣味の中で体を動かすことの方がRAの特有の関節機能障害にとっては低リスクであり継続可能で患者一人一人のライフスタイルに沿うことが可能である。今回の調査では、運動量の決定における歩行能力の重要性は確認できたが、日常生活活動指標の作成のために身体活動量を把握する上で身近な家事動作の検討や家族構成を含めた調査も必要であることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】高齢社会の進展により骨粗鬆症に対する国民の関心は非常に高く骨粗鬆症対策の重要性は、高齢化による患者数の増加、予防と治療の有効性、全身の健康づくりにつながる骨粗鬆症予防、ライフステージ毎の対策の観点から理学療法学研究の一分野として取り上げる必要がある。なかでも骨粗鬆症予防のための健康教育における運動指導は医療機関での対応はもとより骨粗鬆症を特に専門としない従事者にとって理解を深める必要がある。運動指導における運動習慣や日常生活活動の実態把握のために、歩行能力や家事動作の検討や家族構成を含めた調査は、理学療法学研究としての意義がある。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), CcOF2047-CcOF2047, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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