健常者に対する有酸素運動と低周波電気刺激を併用した運動が呼吸循環及び筋力に及ぼす影響

DOI
  • 見供 翔
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院 首都大学東京大学院人間健康科学研究科理学療法科学域
  • 竹井 仁
    首都大学東京大学院人間健康科学研究科理学療法科学域
  • 窪田 幸生
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院
  • 石毛 崇
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院
  • 秋山 美緒
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院
  • 兎 ??在
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院
  • 伊藤 菜月
    社会医療法人河北医療財団河北総合病院
  • 市川 和奈
    首都大学東京大学院人間健康科学研究科理学療法科学域 千川篠田整形外科

抄録

【目的】<BR>運動耐容能向上を目的としたトレーニングに有酸素性運動とレジスタンストレーニングを併用することが重要視されている。先行研究でも、有酸素性運動と無酸素性運動を併用した群は最大酸素摂取量の増加率が大きいとの報告がある。しかし、有酸素運動と低周波電気刺激を併用した運動が呼吸循環へ与える影響についての研究はない。そこで本研究では健常者に対する有酸素運動と低周波電気刺激を併用した運動が、最大酸素摂取量(PeakV(dot)O2)・無酸素性閾値での酸素摂取量(ATV(dot)O2)・下肢筋力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】<BR>12名の健常男性を対象とし、有酸素運動のみの群(運動群)6名と有酸素運動と低周波電気刺激を併用した群(併用群)6名に分けた。運動課題は両群ともATレベルの有酸素運動を20分間週3回実施し、併用群は低周波電気刺激を加えて実施した。低周波電気刺激(Compex、日本シグマックス株式会社)は対象筋を両側大腿四頭筋とし、有酸素運動実施後に痛み閾値の80%の範囲の強度で15分実施した。介入期間は、両群とも開始から2週間自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動のみを実施した(1期)。次に4週間にわたり運動群は有酸素運動を、併用群は有酸素運動と低周波電気刺激を行った(2期)。その後、2週間にわたり運動群は運動を中止し、併用群は低周波電気刺激のみを実施した(3期)。測定項目は、呼気ガス分析装置(Cpex-1、インターリハ株式会社)を用いて測定したATV(dot)O2とPeakV(dot)O2、右膝伸展筋力とし、介入前と各期終了後に測定した。分析方法は二元配置分散分析を行った後に、群内比較はフリードマン検定を行い、事後検定としてウィルコクスンの符号付順位検定を行った。群間比較はMann-Whitneyの検定を行った。有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR>対象者には、研究の概要と得られたデータを基に学会発表を行うことを説明した後に書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR>運動群のPeakV(dot)O 2は介入前に比べ2期後に有意な増加を、2期後に比べ3期後に有意に低下した。等尺性筋力は介入前に比べ2期後に有意に増加した。併用群のATV(dot)O2は介入前に比べ2期後で、1期後に比べ2期後において有意に増加した。PeakV(dot)O2は介入前に比べ2期後で、介入前に比べ3期後において有意に増加した。等尺性筋力は介入前に比べ3期後で、1期後に比べ3期後において有意に増加した。運動群に比べ併用群においてATV(dot)O2は2期後、3期後に有意な増加を、PeakV(dot)O2は2期後に有意な増加傾向を、3期後に有意に増加した。<BR>【考察】<BR>運動群においてPeakV(dot)O2や等尺性筋力の有意な増加を認めことは、有酸素運動により運動耐容能、筋力を改善することを示した。このことは、有酸素運動特有の効果とするミトコンドリアの大きさと数を増大させ、酸化系酵素活性を高め、毛細血管密度を増加させ、結果として酸素拡散能力の向上が認められたためと推測された。運動群に比較した併用群におけるATV(dot)O2やPeakV(dot)O2の有意な増加は、有酸素運動の効果である酸素拡散能力の向上に加えて低周波電気刺激による筋の酸素利用能力の改善・緩衝系の向上に起因することが考えられた。低周波電気刺激は、Type2線維を選択的に刺激することができる。そのため、低周波電気刺激によるType2線維内でのType2b線維からType2a線維へのサブタイプ間の移行に伴った酸化能力向上・緩衝系の向上が生じたことが考えられた。Type2a線維は、Type2b線維と比べ収縮スピード及び解糖能力はほぼ同等であるが、酸化能力および疲労耐性においては優れた特性を有している。そのため、有酸素運動の効果である酸素拡散能力向上に加えて、低周波電気刺激の効果であるType2a線維の割合増加による筋の酸素消費能力向上・緩衝系の向上が起因し、群間で有意な差が生じたと考えられた。今回の結果から、ATV(dot)O2やPeakV(dot)O2を向上させるためには有酸素性運動のみならず、低周波電気刺激を併用して実施するほうがより大きな効果が期待できることが示唆された。また、有酸素運動終了後に低周波電気刺激を継続することで運動耐容能低下を防止できることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>運動耐容能改善を目的とした運動の一つとして有酸素運動に低周波電気刺激を用いたトレーニングの有用性が明らかとなり、このトレーニングが運動耐容能のより効果的な改善をもたらすことを示唆した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), DbPI1334-DbPI1334, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548235776
  • NII論文ID
    130005017426
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.dbpi1334.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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