男子大学生及び社会人の食意識・食行動への家庭科履修の効果

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タイトル別名
  • Effect of the Home Economics Study to Food Consiousness/Behaviors of University Students and the Members of Society of the man

抄録

〈目的〉1994年度から高等学校家庭科が必履修となり,小・中・高等学校を通した食生活の指導が行われている。そこで,男子大学生・社会人を対象に調査を実施し,家庭科の役立ち感,食意識・食行動,食知識,調理技能等に影響を与える事項について明らかにすることを目的とする。<br>〈方法〉2009年1月~3月,男子大学生と社会人(40歳未満)を対象に,家庭科の役立ち感(期待感),家庭科のイメージ,食意識・食行動,食知識,調理技能などについて,自記入式調査を実施した。回収後,有効な251部(有効回収率89.3%)について,統計解析ソフトSPSS13.0を用いて分析した。統計的な有意差の検定は,χ²検定を用いた。<br>〈結果〉①対象者は,大学生118名,社会人133名(20~29歳57名,30~39歳76名)であった。②高等学校の家庭科は,大学生では111名(94.1%)が履修,社会人では62名(46.6%)が履修していた。③家庭科を学んでよかったと回答したのは,大学生の81.0%,社会人の85.5%であったが,役立ち感(期待感)は全体的に低く,50%を超えたのは,「食生活と健康」(大学生50.0%)のみであった。社会人の履修者の方が未履修者より有意に高かったのは,「日常食の調理」「栄養素の機能と摂取の目安」「食品の選択と取扱い」(p<0.001)であり,未履修者の期待の方が高かったのは,「会食の食卓作法」であった(p<0.001)。④家庭科の教科観(イメージ)を肯定的に捉えている者が多く,特に,「生きていくために重要」は,社会人の方が「そう思う」が有意に高かった(p<0.01)。⑤食に関する意識の中で,「空腹を満たすことを第一に考える」「食費にお金をかけたくない」「料理は女性がするもの」については,大学生の方が社会人より有意に高かった(p<0.001)。⑥食行動では,「好き嫌いが多い」「脂っこいものを控えない」(p<0.05),「間食をする」(p<0.001)など,社会人より大学生に問題が多かった。⑦調理能力については,大学生と社会人に有意差は認められなかった。⑧大学生では,運動系サークルに参加している者が,「運動を心がけている」「野菜をたくさん摂る」「運動系のサークルに参加している」(p<0.01)で有意に高く,一人暮らし者が「栄養バランスの良い食事の献立を考える」(p<0.05)「料理を普段からよくする」(p<0.01)「生鮮食品を適切に選ぶ」(p<0.05)「調理実習後,家で料理をする」(p<0.05)で有意に高かった。⑨社会人では,未婚・既婚,勤務形態,居住形態などによって差が認められた。未婚・既婚による差では,「運動を心掛けている」「加工食品は原料・食品添加物・製造年月日に注意して適切に選ぶ」(p<0.05)において,既婚者の方が有意に高かった。勤務形態では,日勤であるが出張が多い者は「3食きちんと食べる」が少なく,「外食やコンビニの利用が多い」(p<0.05)「食事の盛り付けやマナーに気をつける」「栄養バランスのよい食事の献立を考える」(p<0.01)において,有意差が認められた。居住形態では,一人暮らしの社会人は,「外食やコンビニの利用が多い」(p<0.01)ものの,「野菜を沢山摂るように」(p<0.05)心掛けていた。家族(妻子)と同居の社会人は,「多くの種類の食品を摂る」(p<0.01)よう心掛け,「自分で簡単な食事を調理する」「食品の管理・保存が適切にできる」(p<0.05)など,妻子の影響も大きいと思われた。<br>〈まとめ〉男子大学生の食生活は問題が多く,家庭科履修の効果が明らかにできなかった。また,社会人については,家庭科履修の有無より,未婚・既婚,居住形態,残業や出張の多い勤務形態などの影響が大きいことが示唆された。今後更に対象を広げて調査をし,家庭科における食指導を充実していきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595725184
  • NII論文ID
    130005021478
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.3.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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