食と環境についての意識調査

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書誌事項

タイトル別名
  • Consciousness survey of food and environment
  • - Influence by Class of Home economics-
  • -家庭科授業による影響-

抄録

【目的】食と環境についての意識は、我が国において近年高まってきているものの、行動へ結びついていないのが現状である。その背景として、食を取り巻く環境の問題は、家庭環境から地球環境規模の問題まで幅広いことが挙げられる。したがって、限られた授業時間の中で、生徒に何をどう教えていくか、体系的な家庭科の授業展開が必要とされる。本調査は、中学生およびその保護者の食と環境についての意識や行動の現状を把握したうえで、学校での授業による影響や家庭での影響との関連性について検討することを目的とした。そこで、生徒とその保護者に対して、食と環境に関する問題意識と行動についての質問紙調査を実施した。本報告では、本調査の中から、授業における環境配慮行動の変化の有無と消費行動との関係について取り上げ、その実態について報告する。<br>【方法】調査は、A市内の中学校3校(公立2校、国立1校)の校長ならびに家庭科教諭に質問紙調査の協力を依頼した。調査協力の依頼が得られた3つの中学校それぞれの家庭科教員に調査の主旨説目が書かれた質問紙を郵送し、その質問紙を生徒とその保護者に配布してもらった。質問紙は、後日、中学校で一斉に回収してもらった。その結果、3つの中学校の生徒327人から回答を得た。調査期間は、2010年1月から3月であった。<br>【結果】 学校で食や環境に関する授業を受けた後に、(食環境を配慮した)行動に変化があるかという質問に対して、「ある」が45%(144人)、「ない」が55%(175人)と答え、「ない」と答えた生徒の割合の方がやや多かった。また、食に関する消費行動10項目に対して、「いつも実行している。」、「だいたい実行している。」、「あまり実行していない。」、「まったく実行していない。」の4段階評価で評価してもらったところ、「いつも実行している・だいたい実行している」を合わせ、実行していると答えた生徒の数が半数を超えた消費行動項目は、「買い物には、買い物かごやエコバックを持っていく」(248人)、「詰め替え容器に入った商品を選ぶ」(217人)、「食の安全・安心のために、手間や時間がかかっても食べ物はできるだけ手作りにする」(197人)の3項目であった。一方、食環境へ考慮した日頃の消費行動で実行していると答えた生徒の数が少なかった項目は、「プラスチックトレイが使われていないなど、包装が簡単な商品を選ぶ」(106人)、「食の安全や環境のことを考えている商品の販売に積極的な店を選ぶ」(122人)、「食の安全や環境のことを考えている商品の開発を積極的に行っているメーカーを選ぶ」(123人)、「輸送時にはエネルギーを消費していることを考えて地場産の商品を買う」(124人)の4項目であった。さらに、授業での行動変容の有無と日頃の消費行動との関係について、相関がみられた項目が4項目あった。相関がみられた項目は、「買い物に買い物かごやエコバックを持って行く」、「食品添加物や農薬を出来るだけ使用していない商品を買うようにする」、「同じ種類ならば、値段が高くても食の安全や環境のことを考えている商品を選ぶ」、「食の安全や環境のことを考えている商品の販売に積極的な店を選ぶ」であり、それぞれの消費行動項目において、学校で食や環境に関する授業を受けた後に、(食環境を配慮した)行動に変化が「ある」と答えた生徒のグループのほうが、実行している割合が高かった。生徒は、学校以外にも家庭、テレビ、新聞、インターネットなど様々な媒体から知識や情報を得ており、それらが複合的に影響していると考えられる。したがって、学校の授業のみで行動との関連性を測ることはできないが、食と環境に関する授業展開によって、生徒が受ける影響の大きさや受け取り方が変わることが考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595069312
  • NII論文ID
    130005021486
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.37.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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