水田湛水による土壌からの放射線量低減効果の検討

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  • Reduction of radioactivity from soils by floodwater on paddy fields

抄録

東日本大震災時の原子力発電所の被災後,降下した放射性物質による強い放射線のため,多くの人が避難生活を強いられている.空間放射線量を低減させて一刻も早く帰宅できる環境を再生することが,強く望まれている.被災地の居住域周辺には基本的に水田が広がっているが,水田に湛水すると広い範囲の地表面が湛水に覆われるため,水による放射線の遮蔽効果が得られると考えられる.しかし,湛水が水田周辺への空間放射線量へ及ぼす影響について,定量的に明らかにした研究例はこれまでに無い.そこで,本研究では,被災地の現場水田における現地実験とモデル計算により,水田湛水による土壌からの放射線量低減効果の定量的な検討を行った.福島第一原子力発電所から約44.6キロの福島県相馬郡飯舘村佐須に実験圃場を設け,2012年秋に約1ヶ月間かけて,水田へ給水して湛水深約20㎝を維持し,その後排水する過程で,放射線量と湛水深の変化を測定した.短辺約30m,長辺約75mの長方形水田区画の長辺の中点と3つの頂点の計4箇所で地上高さ1mにガイガーミュラー計数管を設置し,放射線量を1時間ごとに測定した.一方,土壌,水,空気の三層の遮蔽体による1次γ線減衰式を用いて,ある高さの空中の測定点における放射線量を計算するモデルを作成した.現地実験では,実験開始時の放射線量は測定点によって異なっていた.湛水深が増加すると各測定点で放射線量が減少し,湛水深をほぼ20㎝に保った間の放射線量の変動は各測定点とも小さかった.湛水深が減少すると,各測定点の放射線量は増加したが,湛水深がゼロになっても実験開始時の放射線量までは戻らなかった.これらにより,湛水による放射線量低減効果が確認できた.モデル計算による検討と併せて,水田土壌内の放射線物質濃度がばらついている可能性があること,散乱放射線が放射線量の影響範囲を広くしている可能性があることが考えられた.今後,自然崩壊を考慮してモデル化を行う,もしくは現地実験データを補正する必要性が指摘された.

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  • CRID
    1390001205712536704
  • NII論文ID
    130005050873
  • DOI
    10.11520/jshwr.26.0.100.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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