Calpain-Calpastatinシステムが黄体細胞への分化を誘導する

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抄録

【目的】哺乳動物の不妊症は,家畜動物では,経済的な問題が生じ,ヒトでは社会的な問題が生じる。我々は,不妊症の中でも,黄体機能不全に着目し研究を行っている。黄体化には,細胞の形態変化がみられるが,そのトリガーは,細胞骨格を分解するCalpainの活性が関与している可能性がある。また,Calpainは,抑制因子Calpastatinによって活性が制御されている。我々はCalpain-Calpastatinの機構が顆粒層細胞の黄体化に関与しているか否かを検討するために研究を行った。 【方法】マウスに,PMSGを投与し,44時間後にhCG投与,また,hCG投与2時間毎にCalpain抑制剤を投与した。その後,顆粒層細胞/黄体細胞を回収し,Calpain 1Calpain 2,Calpastatin,E2合成酵素,P4合成酵素の遺伝子発現と,Calpainの酵素活性を測定,組織切片で形態観察した。さらに体外培養を行い抑制剤投与/未投与区で,E2合成酵素とP4合成酵素に関与する遺伝子と,培液中のE2とP4量を計測した。 【結果】顆粒層細胞はCalpain2が発現し,Castの発現は,hCG12時間で発現が最大であった。Calpain活性は,hCG投与後4時間でピークを迎え,hCG投与後8時間から再び増加していた。抑制剤投与は,4時間のピーク抑制は黄体化したが,8時間の活性を抑制することで,E2合成酵素遺伝子の発現が高く,P4合成酵素遺伝子の発現,形態変化が抑制されていた。10時間以降の抑制は,逆にP4合成酵素の遺伝子発現を促進していた。体外培養系では,体内の結果を指示する遺伝子発現パターンが得られ,培液中もE2濃度が高く,P4濃度が低い結果が得られた。以上の結果から,顆粒層細胞の黄体化は,LH刺激後5.5~9.5時間までのCalpain活性による細胞分化誘導と,LH刺激9.5時間以降は,CalpastatinによるCalpainの活性抑制によるP4産生効率の促進が機能していることが明らかとなった。

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  • CRID
    1390001205716256640
  • NII論文ID
    130005051014
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.aw-1.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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