卵巣摘出ヌードマウスに移植した子宮内膜細胞の挙動

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抄録

【目的】マトリゲルに分散させたヒト子宮内膜細胞をヌードマウス腹腔内に移植した場合,卵巣摘出部位に顕著な細胞含有ゲル塊が出現する。今回,これが内膜症病変の性質をもつのか否かを明らかにするために,形態学的解析と構成細胞における蛋白質発現の変化,さらに変動した蛋白質の活性を評価した。【方法】腺上皮細胞株と間質細胞株の分散液を,片側卵巣摘出術(OVX)施行,または非摘出(Sham群)動物の腹腔内に注入した。3日または5週間後の生着組織の免疫組織化学的な観察を行った。3日後のゲル塊由来の細胞ライセートを二次元電気泳動とLC-MS/MS・MALDI-TOF MSを組み合わせた蛋白プロファイリング比較解析に供し,蛋白質レベルの変化を探索した。また,定量的RT-PCR法で炎症関連因子の発現を,ELISA法でPGE2を定量した。さらに,変化が検出された蛋白質の活性の検討を加えた。【結果】回収した生着組織は,大部分が散在したビメンチン陽性細胞(間質細胞)により構成され,一部で腺様構造がみられた。蛋白質比較解析の結果,OVX群ゲル塊由来の細胞ライセートでは,セリンプロテアーゼ阻害因子であるα1-アンチトリプシン(α1-AT)レベルが低下していた。また,COX-2とIL-6発現が上昇し,PGE2含量は増加した。これら発現は,移植細胞へのセリンプロテアーゼ阻害薬の処置により抑制された。培養間質細胞において,セリンプロテアーゼであるトロンビンの刺激はIL-6,IL-8,COX-2発現を増加させた。α1-AT処置はこのIL-8を有意に抑制した。【考察】移植間質細胞は腺細胞よりも生着しやすく,炎症性サイトカイン産生が上昇することが分かった。子宮内膜症では月経血中の正常内膜細胞が形質転換し,病巣は炎症を伴い増悪する。今回,卵巣摘出に伴う出血が炎症を起こし移植細胞の性質を変化させたと考えられる。この出血成分の1つとして,セリンプロテアーゼが考えられ,その阻害因子(α1-AT)の低下が炎症反応を助長させる可能性が示唆された。

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  • CRID
    1390282680692921600
  • NII論文ID
    130005051035
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or1-23.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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