Galectin-1によるウシ黄体機能維持機構の解明

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抄録

(目的) 黄体は,その内外で産生される黄体刺激および黄体退行因子によって機能を調節し,妊娠の成立に必須のprogesterone (P4) を産生する一過性の内分泌器官である。Galectin-1 (GAL1) は,細胞表面の糖鎖を介して様々な細胞機能の調節に関与することが知られている。しかし,黄体におけるGAL1の機能および作用機序は明らかにされていない。本研究では,ウシ黄体におけるGAL1の役割を明らかにするために,発情周期を通じた黄体のGAL1発現量の変化を調べるとともに黄体におけるGAL1の機能を調べた。(方法) 1. 黄体の発情周期を通じたGAL1タンパク質発現を調べた。2. 細胞表面上でGAL1が糖鎖と結合しているかどうかを調べるために,培養黄体細胞にLactoseまたはSucroseを添加し,GAL1の細胞表面での発現量を調べた。3. 培養黄体細胞にGAL1を添加し,細胞生存率およびP4 分泌への影響を調べた。4. 糖たんぱく質であるVEGFR-2は黄体細胞で発現し,細胞の生存に関与することからGAL1の標的分子となることが考えられるため,黄体の発情周期を通じたVEGFR-2のmRNAおよびタンパク質発現の変化を調べた。5. VEGFR-2の発情周期を通じた糖鎖修飾についてレクチンブロットにより検討した。(結果) 1. GAL1発現は中期の黄体組織で高かった。2. GAL1はLactose処理により細胞表面における発現が減少した。3. 中期黄体細胞の生存率およびP4分泌はGAL1添加により増加した。4. 黄体におけるVEGFR-2 mRNA発現は退行期を除いて高かったがタンパク質発現は中期で高かった。5. VEGFR-2はDSAレクチンと反応した。(まとめ) VEGFR-2タンパク質はGAL1と同様に中期黄体で発現が高く,GAL1結合性の多分岐型糖鎖で修飾されていた。また,GAL1はLactoseにより発現が減少したことから,細胞表面上のタンパク質と糖鎖を介して結合していることがわかった。これらのことより,GAL1がVEGFR-2を含む膜タンパク質糖鎖を介して結合し,P4分泌および生存シグナルを調節することによって黄体細胞の生存率を上昇させ,黄体機能を維持する役割を担っている可能性が示された。

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