セルトリ細胞の有糸分裂における紡錘体結合タンパク質Astrinの役割

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抄録

【目的】セルトリ細胞は精子形成細胞の機械的支持や保護,栄養供給,貪食作用などの機能を有するため,その障害は雄性不妊の原因となる。我々の研究室で維持している性腺低形成症(hypogonadism: HGN)ラットは,体細胞分裂周期の分裂期(M期)に紡錘体および動原体に局在し,M期の進行に重要なタンパク質であるAstrin遺伝子に変異を持ち,全身性にAstrinを欠損していると考えられる。Astrinを欠損したhgn/hgnラットは精巣の重量が正常の約1%で,精子形成が起こらないため不妊となる。トランスジェニックによるAstrin遺伝子の導入はhgn/hgnラットの表現型を救済する。これまでの解析から,HGNラットにおける精巣の低形成は胎生後期から始まり,顕著なセルトリ細胞数の減少を伴うことが分かっている。本研究ではHGNラットの精巣形成不全症の病態発生機構を解析し,セルトリ細胞の細胞分裂過程におけるAstrinの役割を明らかにすることを目的とした。【結果】3日齢hgn/hgnラットより作製された精巣の組織標本では,多重染色法によりセルトリ細胞においてM期とアポトーシスの著しい増加が確認された。また,hgn/hgnラットから分離されたセルトリ細胞を用いた解析では,M期の延長とアポトーシスの著しい増加が確認されたのに加えて,M期の進行に異常が生じていることが明らかとなった。【考察】株化細胞においてAstrinをノックダウンした場合,細胞はM期の進行途中で分裂異常を呈し,細胞周期を停止した後にアポトーシスを起こす。これらの報告は本研究にて観察されたセルトリ細胞の異常がAstrinの欠損に起因していることを強く印象付ける。加えて,hgn/hgnラットにおいてセルトリ細胞特異的なM期の異常が観察されたことは,これまで知られていないAstrinの臓器特異的な役割を示していると考えられる。これらの新たな知見より,Astrinはセルトリ細胞の正常な有糸分裂の進行に重要なタンパク質であることが明らかとなった。

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  • CRID
    1390001205715371136
  • NII論文ID
    130005051061
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or2-1.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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