ラット下垂体前葉におけるケモカインCXCL10の発現

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抄録

【目的】ケモカインは,Gタンパク質受容体を介して作用する分泌性低分子(7-16kDa)サイトカインである。これまでに,神経組織,免疫組織,内分泌組織などでの発現が報告され,細胞の移動,遊走,分化,増殖などに関与することが明らかとなっている。我々は,下垂体前葉ではCXCケモカイン(CXCL)12とそのレセプターであるCXCR4が,非ホルモン産生細胞である濾胞星状細胞(FS細胞)で発現し,FS細胞の移動,接着を誘導することを報告している(Horiguchi et al. 2012)。しかし,それ以外のケモカインの発現に関しては不明である。そこで本研究では,下垂体前葉におけるCXCLおよびそのレセプター(CXCR)の発現を網羅的に解析し,発現細胞の同定を明らかにすることを目的とした。【方法】オス成体ラット下垂体前葉から得られたRNAを用い,CXCLおよびCXCR遺伝子発現をRT-PCRにて解析し,さらに発現細胞をin situ hybridizationおよび免疫組織化学により同定した。【結果】新たにCXCL10の発現が下垂体前葉で観察され,その発現細胞はFS細胞であった。CXCL10レセプターであるCXCR3は,ACTH産生細胞で発現していた。これは,FS細胞から分泌されるCXCL10がパラクライン的にACTH産生細胞へ作用することを示唆している。さらに,FS細胞特異的にGFPを発現するトランスジェニックラットを用いて,CXCL10を発現するFS細胞をin vitroにおいて観察したところ,CXCL10を発現するFS細胞と発現しないFS細胞とが存在し,両者には形態的な差異が観察できた。長らくFS細胞は下垂体前葉に存在するS100βタンパク質を発現する細胞と認識されてきたが,本結果は,S100βタンパク質発現細胞は,均一な細胞群ではなく,不均一な集団である事を示している。今後,CXCL10のACTH産生細胞への機能やCXCL10を発現するFS細胞のさらなる特徴を明らかにして行きたいと考えている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715469952
  • NII論文ID
    130005051069
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or2-17.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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