人工授精で雌を受胎させにくい精子を産生する黒毛和種雄個体の検出法 −凍結保存後の精子先体の正常性と体内受精由来の移植可能胚率の関係−

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抄録

【目的】一般精液性状が正常にもかかわらず人工授精での受胎率が極めて低い精子を産生する黒毛和種雄個体(低繁殖能力雄個体)を検出するため,当センターでは,凍結精液を人工授精した過剰排卵処理雌での体内受精由来の移植可能胚率を指標として利用している。本研究ではより簡便に低繁殖能力雄個体を検出するための試みとして,凍結精子の先体の形態と移植可能胚率の関連を検討した。また,これらの検査結果とチロシンリン酸化(pY)型SPACA1の分布状態との関係も検討した。【方法】通常の検査で異常の認められない黒毛和種雄14頭の凍結精液を試験に供した。既存の検査としてFSH 20 A.U.を漸減法で投与して過剰排卵処理を施した雌に凍結精液を人工授精した後,発情開始後7.5日目に非外科的に胚を採取して移植可能胚率を算出した。精子先体の形態観察では,PFA固定した精子をFITC標識PNAで染色し,先体の損傷度に従って7段階(PNA-I:正常,II:軽度損傷,III~VII:重度損傷)に分類した。先体pY型SPACA1の分布状態については,メタノール固定した塗抹精子に抗リン酸化チロシン抗体を用いた間接蛍光抗体法を施し,精子を3段階(pY+:多,±:少,−:無)に分類した。【結果】PNA- IおよびPNA-I+IIの割合と移植可能胚率の間のスピアマン順位相関係数はそれぞれr=0.88,0.81であった(P<0.01)。pY+の割合と移植可能胚率の相関係数はr=0.72であった(P<0.01)。pY+の割合とPNA-IおよびPNA-I+IIの割合の間の相関係数はそれぞれr=0.80,0.79であった(P<0.01)。以上の成績から,凍結保存後の精子先体における形態の正常性およびpY型SPACA1の分布状態の検査を黒毛和種での低繁殖能力雄個体の検出に利用できることが判明した。また, pY型SPACA1の分布異常が精子先体の低耐凍性に関与している可能性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692170496
  • NII論文ID
    130005051085
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or2-31.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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