体外発生培地へのプロジェステロン添加がウシ体外受精胚の発生におよぼす影響

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抄録

【目的】プロジェステロン(P4)は黄体組織から分泌されるホルモンであり,血流を介して子宮に到達し,着床のための子宮環境の構築,さらには胚着床後の妊娠維持に重要な役割を担う。ウシにおいては卵管液中にもP4が存在するため,胚はP4の存在下で初期発生が進行する。このことから,P4はウシ初期胚の発生に影響をおよぼしている可能性がある。そこで本研究では,体外発生培地へのP4添加がウシ体外受精(IVF)胚の発生におよぼす影響について検討を行った。【方法】食肉処理場由来ウシ卵巣から卵丘細胞-卵子複合体を吸引採取し,体外成熟培養20時間後に媒精を行うことでIVF胚を得た。IVFを行った日をDay0としてDay8まで胚の体外培養を行った。血清およびBSA無添加の体外発生培地(0.1%PVA添加mTALP)へのP4添加は,前半(Day0–3)と後半(Day3–8)に分けて行い,P4(15 ng/ml)を全期間添加する区(++),前半のみ添加する区(+−),後半のみ添加する区(−+),全期間添加しない区(−−)の計4区を設定した。これら条件下で体外培養を行ったIVF胚の発生率および胚盤胞期胚(Day8)における総細胞数とアポートーシス(TUNEL陽性)細胞の割合を調べた。【結果および考察】Day2における胚の分割率(61.7–68.3%)およびDay4における8細胞期以降への発生率(40.9–44.4%)は,各処理区間に有意な差は認められなかった。胚盤胞期(Day8)への発生率は,−−区(9.3%)と比較して++区(22.0%)において有意(P<0.05)に高い値を示した。胚盤胞期胚における総細胞数およびTUNEL陽性細胞率は,各処理区間に有意な差は認められなかった。本研究の結果から,体外発生培地へのP4添加はウシIVF胚の胚盤胞期への発生率を向上させることが明らかとなった。このことは,ウシ母体内において,P4が胚の初期発生にも直接関与することを示唆するものである。

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  • CRID
    1390001205714929536
  • NII論文ID
    130005051116
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-112.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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