ラット胚における水および耐凍剤に対する透過性と透過経路

DOI

抄録

【目的】細胞膜の水や耐凍剤に対する透過性は,細胞の適した凍結保存条件に大きな影響を与える。しかしながら,ラット胚の細胞膜の透過特性は明らかにされていない。そこで,様々な発生段階のラット胚の水と耐凍剤に対する透過性を算定し,発生段階による違いをしらべた。さらに,細胞膜透過性の温度依存性から,各発生段階での水と耐凍剤の透過経路を推定した。【材料と方法】Wistar系雌ラットを同系雄ラットと交配し,発情の40時間後に2細胞期胚,70時間後に4細胞期胚,80時間後に8細胞期胚,90時間後に桑実胚を回収した。一部の桑実胚は培養して胚盤胞まで発育させた。胚を0.43 M スクロース,10%(v/v) グリセロール(Gly),8%(v/v) エチレングリコール(EG),9.5%(v/v) DMSOあるいは10%(v/v) プロピレングリコール(PG)を添加したPB1液(25℃)に浸し,その体積変化から水および耐凍剤に対する透過係数を算定した。さらに,25℃と15℃での水透過係数および耐凍剤透過係数から,アレニウス活性化エネルギー(Ea)を算出した。【結果と考察】2細胞期胚と4細胞期胚の水透過性は低く,Ea値は著しく高かったが,桑実胚と胚盤胞では透過性は高く,Ea値も低かった。Gly,EGおよびDMSOに対する透過性は,2細胞期胚と4細胞期胚では低く,Ea値も高かったが,桑実胚と胚盤胞では透過性は高く,Ea値は低かった。一方,PG透過性は,発生段階による差は小さく,Ea値は高かった。以上の結果から,ラット胚において水や耐凍剤は,初期分割胚では主に単純拡散によりゆっくり移動しているが,桑実期以降の胚では,PGを除き,チャンネルを介した促進拡散も加わり,より速やかに移動していると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691666048
  • NII論文ID
    130005051125
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-120.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ