脂肪小滴を除去したブタ単為発生2倍体胚のライブセルイメージング

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抄録

【目的】ブタ卵母細胞や初期胚には,他の哺乳類と比較して多量の脂肪小滴が含まれている。この多量の脂肪小滴の役割は完全には解明されていないが,脂肪小滴の除去によりブタ卵母細胞や初期胚の凍結保存後の生存率は向上する(Nagashima et al., 1994)。近年,ライブセルイメージングによって,細胞を生きたまま長期間観察することが可能となった。またGFP融合蛋白質などを利用したライブセルイメージングでは,目的の分子が特異的に可視化されるため,その動態を経時的に観察することができる。しかし,ブタ卵母細胞に含まれる多量の脂肪小滴は,蛍光の検出を困難とする。本研究では,脂肪小滴を除去したブタ成熟卵母細胞を準備し,活性化刺激後の発生を調べるとともに,この系を用いてライブセルイメージングを試みた。【方法】直径4~6 mmの卵胞から卵核胞期のブタ卵母細胞を採取し,成熟培養した。第二減数分裂中期の卵母細胞を遠心分離した後,脂肪小滴を顕微操作により除去した。その後,電気刺激による活性化とCytochalasin B処理により,単為発生2倍体を作出し,PZM-3培地中で培養した。実験1では,24時間ごとに胚発生を観察し,胚盤胞への発生を調べた。実験2では,脂肪小滴を除去した卵母細胞に,核小体に特異的な蛋白質NPM2 - EGFPとヒストンH2B-mCherryのmRNAを顕微注入し,ライブセルイメージングによって核小体と染色体の動態を共焦点顕微鏡を用いて経時的に観察した。【結果】実験1:脂肪小滴を除去したブタ単為発生2倍体胚の胚盤胞への発生率と,未処理胚の発生率との間に有意差はみられなかった。実験2:NPM2-EGFPとヒストンH2B-mCherryのmRNAを顕微注入し,経時的に観察した結果,脂肪小滴を除去した胚では未処理胚よりも,核小体とクロマチンの局在と動態を明瞭に観察することができた。ブタ胚においても,マウス胚と同等のライブセルイメージングが可能となった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715017216
  • NII論文ID
    130005051148
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-21.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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