ヒト射出精子におけるSPACA1の検出 —先体での検出パターンと体外受精成績との相関性—

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抄録

【目的】抗SPACA1抗体での処理により,ヒト精子は透明帯除去ハムスター卵子への侵入能力が抑制されると報告されている。しかし,ヒト精子におけるSPACA1の機能の詳細は不明である。本研究では,ヒト精子の受精能力・正常な胚発生を導く能力とSPACA1との関係を明らかにするために,射出精子先体でのSPACA1の検出パターンと,体外受精成績の相関性を検討した。 【方法】インフォームドコンセントの得られた一般的な体外受精(C-IVF)の施行患者を対象とした。連続密度勾配法とSwim up 法を併用して回収した運動精子を性状検査の後に,37℃で3時間前培養して体外受精に供した。また余剰精子を,抗SPACA1抗体を用いた間接蛍光抗体法(IIF)に供した。媒精19時間目に受精の有無を確認し,5日目に良好胚盤胞発生率を調べた。なお,体外受精成績については,GnRH法で卵巣刺激を施行した40歳未満の患者で,回収胚が5個以上の症例を対象とした。 【結果】精子先体におけるIIFでは,A)先体主部(主部)と赤道節の両方で強く検出される精子,B)赤道節では強く,主部では弱く検出される精子,およびC)赤道節では強く検出されるが,主部では検出されない精子の3種類のパターンが観察された。また各パターンを示す精子の割合には個体差が認められたが,各個体での割合に前培養前後で有意な変化は見られなかった。他方,体外受精の受精率および良好胚盤胞発生率は,それぞれ0~88.9%,0~26.3%と患者間で大きく変動したが,これらの値と精子奇形率との間に有意な相関は認められなかった。また受精率はSPACA1のいずれの染色パターンの割合とも有意な相関を示さなかったが,良好胚盤胞発生率はパターンAを示す精子の割合と有意な正の相関を示した(R2=0.860 P=0.0003)。 【考察】ヒト精子先体でのSPACA1の分布状態には個体差が存在し,その分布状態が精子の正常な胚発生を導く能力に関与すると推察された。

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  • CRID
    1390282680692543488
  • NII論文ID
    130005051166
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-38.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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