交尾刺激を伝達する神経回路の解明

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抄録

【目的】交尾排卵動物であるスンクス(Suncus murinus)の雌では,交尾刺激が脳の視索前野に存在するキスペプチンニューロンを活性化することによって,排卵制御に関わるキスペプチンや性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を刺激し,排卵を誘起することが明らかになっている。しかしながら,交尾刺激がどのような神経回路を経て脳へと伝わり,視索前野のキスペプチンニューロンの活性化に繋がるのかは不明である。我々はこれまでに,スンクスでは第2仙骨神経(S2)および第3仙骨神経(S3)由来の知覚神経が主体となって交尾刺激を膣から受容することを明らかにしたが,これは交尾刺激を伝達する神経回路の一部を見出したにすぎない。そこで本研究では,視索前野に投射する神経細胞を逆行性トレーサー法によって明らかにし,S2,S3の知覚神経へとつながる経路を解明することで,交尾刺激を伝達する神経回路の全貌を明らかにすることを目的とした。【方法】4%PFAで固定した雌スンクスの脳を使用し,視索前野に神経トレーサーであるDiIの結晶を埋め,4%PFAに浸漬し,暗所37℃にて約2ヵ月間インキュベートした。その後,マイクロスライサーにて70 μmの横断切片を作製し,蛍光顕微鏡下で観察を行った。【結果】扁桃体内側基底核および扁桃体内側核,中脳水道周囲灰白質腹外側部,青斑核,孤束核など,様々な領域で標識された神経細胞体を確認することができた。哺乳類では古くから扁桃体から分界条を経て視床下部に投射する経路が知られており,スンクスにもこの経路が存在すると考えられた。また,哺乳類では触覚などの一般体性感覚が脊髄から上記の4領域へ伝達される経路も知られているため,膣で受け取られた交尾刺激が伝達される際には,S2,S3の知覚性脊髄神経から脊髄,さらに今回標識のあった扁桃体や中脳水道周囲灰白質,青斑核,孤束核などの領域を介して視索前野まで伝達される可能性が示唆された。

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詳細情報

  • CRID
    1390282680692533120
  • NII論文ID
    130005051174
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-45.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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