アライグマ精巣組織における精子形成調節機構の解析:ステロイド代謝およびテストステロン感受性との関連性の解明

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抄録

【目的】一般に季節繁殖動物の雄では,非繁殖期には血中テストステロン(T)濃度が低く精子形成機能が低下する。しかし,冬に交尾期を持つアライグマ(Procyon lotor)では,非繁殖期である夏にT濃度が低いにも関わらず精子形成が活発な個体がいることが報告されている。このことは,T産生と精子形成が異なる機構により調節されている可能性を示している。本研究は,ステロイド代謝酵素(P450scc,P450c17,3βHSD,P450arom) およびアンドロジェン受容体(AR)発現の季節差と個体差を解析することにより,T産生および感受性と精子形成との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】冬期個体(n=4),夏期に活発な精子形成がみられた個体(n=4)および夏期に精子形成がみられなかった個体(n=6)について,血漿中T濃度をELISA法にて測定した。また,精巣組織切片の免疫染色により上記4酵素とARの発現部位を特定し,3群間での発現強度を比較した。【結果・考察】精巣組織において,P450sccおよびP450c17はLeydig細胞,3βHSDはLeydig細胞およびSertoli細胞,P450aromはLeydig細胞,Sertoli細胞および一部の精子細胞で発現が確認された。夏期個体の平均T濃度は冬期個体に比べ低値であった(夏:0.2ng/ml,冬: 2.3ng/ml)。P450sccおよびP450c17は3群間で発現強度に差は見られなかったが,3βHSDは冬期個体に比べ夏期個体で発現が弱かったことから,T産生には3βHSDの発現変化が関係していることが示唆された。またP450aromおよびARは夏期に精子形成がみられた個体では冬期個体と同程度に発現したが,夏期に精子形成がみられない個体では極めて発現が弱かったことから,夏期の精子形成維持にはP450aromおよびARが関わっており,それぞれ精子の成熟機構および精巣組織におけるテストステロン感受性の維持に関係していることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692479616
  • NII論文ID
    130005051190
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-6.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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