白斑および白皮症におけるメラノサイト,メラノソームの電顕的観察

  • 堀 嘉昭
    東京大学医学部皮膚科 北里大学医学部皮膚科

書誌事項

タイトル別名
  • 自斑および白皮症におけるメラノサイト,メラノソームの電顕的観察
  • ジハン オヨビ シロ ヒショウ ニ オケル メラノサイト , メラノソーム ノ デンケンテキ カンサツ

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抄録

白斑あるいは白皮症に関する研究は,多くの学者によつてなされてきたが,色素脱失の原因は,それぞれの疾患において異なつている.色素脱失症は,先天的のものと,後天的のものに二大別できるが,先天的のものには,Total albinism(Oculocutaneous albinism),Partial albinism(Piebaldism),Nevus depigmentosus,プリングル氏病における白斑,フェニルケトン尿症,Chediak-Higashi症候群などが挙げられ,後天的のものに尋常性白斑,Suttonの白斑,老人性白斑などがあげられる.また,これらの疾患において,どのレベルでの障害が,脱色素をもたらすかについて考えるとき,それぞれ異なつていることに気付く.1950~1960年代の初めまでは,ランガーハンス細胞は,メラノサイトと同系統の細胞との仮説が一般的であつたが,その後のランガーハンス細胞内小器官特に,Birbeck顆粒に関する諸家の研究によつて,ランガーハンス細胞の本態論は振り出しに戻つた.ランガーハンス細胞がどの系統の細胞であるかを論ずるにはBirbeck顆粒の本態を究明することが先ず必要となつてくる.また一方,尋常性白斑のときに,表皮内に見られるドーパ陰性樹枝状細胞を,ランガーハンス細胞と気軽く呼ぶこともできない.しかし,尋常性白斑や,Suttonの白斑のときに,明らかに,表皮メラノサイトの消失あるいは,その数の減少が認められるが,消失するメラノサイトの運命については,未だ解明されていない.一方,実験的に,Bleehenらは,一種のカテコールを用いて褐色モルモットの表皮から,メラノサイトを消失させる実験を行なつたが,これがどういう機序によるものかは,未だ明らかでない.すなわち,普通に,電子顕微鏡のみを用いることによつては,病因を知ることはできない.しかし,電子顕微鏡によつて細胞の状態と,organelleの状態を知ることができるし,さらに組織化学や,生化学や,ラジオオートグラフィの組合せで,動的に細胞の状態を把握することも可能となつて来た.本報では,種々の形の色素脱失症における表皮メラノサイトと,メラノソーム,さらにメラノソームの表皮細胞への移行について述べ,脱色素症の鑑別,病因について検討したい.また本報において用いられるメラノソームのStageについては,Clarkらが,Stages Ⅰ,Ⅱ,ⅢおよびⅣなる用語を用い,著者らもこれを用いる方が,より科学的であるとの見地から,簡単に説明すると(第1図), Stage Ⅰ-Melanosome:ほぼ球形で,その中に不定形の物質を有し,チロジナーゼ活性は陽性である. Stage Ⅱ-Melanosome:紡錘形ないし卵型,特有のperiodicityを持つ膜様のfilamentsを保有する.チロジナーゼ活性は陽性. Stage Ⅲ-Melanosome:メラニンの形成と沈着によつて特有のperiodicityが,ややはつきりしなくなる.チロジナーゼ活性は陽性. Stage Ⅳ-Melanosome:メラニンの生成が殆んど終了し,内部構造は殆んどわからなくなる.

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