陳旧性眼窩骨折患者に対する手術適応の決定に用いる眼窩シネモードMRIの基準値作成とその応用

書誌事項

タイトル別名
  • CREATION AND APPLICATION OF A REFERENCE VALUE FOR CINE MODE MAGNETIC REFERENCE IMAGING FOR DETERMINING SURGICAL INDICATIONS IN PATIENTS WITH AN OLD BLOW-OUT FRACTURE
  • チンキュウ セイガンカコッセツ カンジャ ニ タイスル シュジュツ テキオウ ノ ケッテイ ニ モチイル ガンカシネモード MRI ノ キジュンチ サクセイ ト ソノ オウヨウ

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抄録

陳旧性眼窩骨折患者の手術適応を決定する際,当科では眼窩シネモードMRI検査を実施している.眼窩シネモードMRIは,眼窩MRIの静止画像を連続表示させることにより眼球運動や外眼筋の運動を動画として捉えることのできる検査方法で,本邦では1980年代後半から行われている.しかし,現時点で読影基準は統一されておらず,読影は治療者の主観にまかされているのが現状である.そこでわれわれは,眼窩シネモードMRIの基準値を作成するとともに,その応用について検討した.まず,20代から50代の健常ボランティアを各年代で男女5人ずつ募り,矢状断上下運動,冠状断上下運動,水平断左右運動,冠状断左右運動,計4種類の眼窩シネモードMRIを撮像した.そして各画像を計測し,眼窩シネモードMRIの基準値を作成した.矢状断上下運動では,下直筋の伸展率,収縮率,菲薄化率,肥厚率,視神経の振幅を求めた.冠状断上下運動では,下壁下直筋距離,下直筋内直筋距離等を求めた.正常例では,最上方視時から最下方視時になるに従って段階的に眼窩底と下直筋間に間隙が出きていく現象が全例に見られた.この現象は,下直筋と眼窩底間の癒着の有無を評価するのに有用なサインであると考えられ,陳旧性眼窩底骨折の際の眼球運動障害の評価に使用した.水平断左右運動では,矢状断上下運動と同様に内直筋の収縮率や伸展率を求め,冠状断左右運動とともに陳旧性眼窩内壁骨折の評価に使用した.冠状断左右運動で,眼球の最外転時に視神経に押されて内直筋が三日月型に窪む現象が正常ボランティアの97.5%に見られた.このサインが見られれば,内直筋に瘢痕がなく柔らかい状態であることが示唆された.主観的,直感的に眼窩内の病態を捉えられるということが眼窩シネモードMRIの利点であるが,今回われわれが求めた基準値を適用することで客観的な評価も出きるようになった.それにより,眼窩シネモードMRIは,陳旧性眼窩骨折の手術適応の決定あるいは,術後評価において有用な検査方法になると考えられた.

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