トレッドミル検査中にST上昇を認めメチルエルゴノビン負荷冠動脈造影にて運動誘発冠攣縮狭心症が疑われた1例

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  • A case of treadmill-stress-induced vasospastic angina suggested by coronary angiography with methylergometrine maleate

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抄録

症例は61歳男性,2013年5月より起床後の労作時息切れと胸部絞扼感を自覚.日中は症状なく,1時間程度の散歩も難なく可能であるが,起床時の症状は継続しているため心機能精査目的で当院紹介受診.既往歴は高血圧(治療中),家族歴は父母高血圧でその他特記すべきことなし.安静時心電図,心臓超音波検査では異常を認めなかったが,トレッドミル負荷試験(Bruce protocol)開始5分(6.9METS)で胸部不快感を訴え,前胸部誘導V1–V4のST上昇を認めた.ニトログリセリンの舌下投与により胸部痛は改善傾向であり,負荷終了にてSTは基線に戻った.翌日,冠動脈造影検査を施行.左前下行枝#6の50%狭窄を認めたが,左右冠動脈に有意狭窄は認めなかった.引き続き右冠動脈に対してエルゴノミン負荷を行ったところ,#2に冠動脈攣縮が誘発され,運動誘発性冠攣縮狭心症と診断された.冠攣縮性狭心症の多くは,血管内皮が傷害されている状態で,早朝(安静時)突然に交感神経が刺激されることによって冠攣縮が起こりやすいと考えられている.今回経験した運動誘発性冠攣縮狭心症は日常労作や運動試験により冠攣縮が誘発され心筋虚血が生じる病態であり,器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症症例の約40%前後に労作による誘発が認められるとされている.以上,運動負荷にて冠攣縮狭心症が誘発された1例を経験したので報告する.

収録刊行物

  • 医学検査

    医学検査 63 (2), 210-215, 2014

    一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会

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