セルロースナノファイバーの製造とシート化技術

  • 伏見 速雄
    王子ホールディングス株式会社 イノベーション推進本部 革新事業推進センター インキュベーション推進室

書誌事項

タイトル別名
  • Manufacturing of Cellulose Nanofiber and Sheet-making Technology
  • セルロースナノファイバー ノ セイゾウ ト シートカ ギジュツ

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抄録

セルロースナノファイバー(CNF)は木質パルプなどを微細化して製造される直径3~4nm,長さサブミクロン~数μmの繊維である。<BR>パルプの微細化によるCNFの製造においては,単に機械的なせん断力を加えるだけでは,繊維同士の強固な水素結合のため,微細化に必要なエネルギーが大きく,得られるCNFも不均一となる問題があった。当社では,パルプの微細化処理を容易にするため,酸化,エステル化などの化学前処理法を開発してきた。化学処理によりCNFの繊維径,繊維長のほか,表面性(カチオン化,アニオン化,疎水化,機能性官能基導入など)を制御でき,用途に合わせたCNFの製造が可能である。当社はこれらのCNFの様々な用途への適用を検討している。<BR>当社では化学処理により得られた繊維径4nmのCNFを使用し,CNF透明シートを連続的に製造することに成功した。CNF透明シートは全光線透過率90%,ヘーズ1%以下と高い透明性を示すほか,優れた機械的性質,有機溶剤耐性,フレキシブル性などのユニークな特性を有している。これらの特性から,フレキシブル有機ELディスプレイ,折りたためる太陽電池,フレキシブルTFT基板等への用途展開が考えられる。<BR>CNFと樹脂エマルジョンの混抄シートを樹脂と混練することで,CNF樹脂コンポジットの製造にも成功している。樹脂エマルジョンが脱水時に起こるCNFの凝集を阻害することで,CNFの樹脂中での分散性を向上させることができる。PEとCNFのコンポジットでは,CNF20%含有時に弾性率が2.8倍,強度は2.2倍に増大した。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 69 (1), 50-53, 2015

    紙パルプ技術協会

参考文献 (4)*注記

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