鳥類の社会形態の進化に関与する生活史要因の重要性

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タイトル別名
  • Life history and the evolution of social organization in birds
  • チョウルイ ノ シャカイ ケイタイ ノ シンカ ニ カンヨ スル セイカツシ ヨウイン ノ ジュウヨウセイ

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抄録

鳥類の社会形態は多様な進化を遂げており,種間の変異が非常に大きい.社会行動の個体間,個体群間,近縁種間の変異に注目した多くの研究が,変異に連関した生態的要因を明らかにして来た.現在では,多くの野外研究の蓄積と分子系統学の進展により,多岐の分類群にまたがった系統比較が可能となった.しかし,生態的要因だけでは社会形態の多様性を説明できず,その変異の基盤には生活史要因が関与していることが指摘されるようになった.そのための重要なアプローチとして,異なる分類群レベルを対象とした階層的な系統比較法が適用され,どのような生態的要因,生活史要因,環境要因が社会行動の変異と連関しているかを明らかにしつつある.本論文では,鳥類の配偶様式,つがい外父性,種内托卵,協同繁殖,家族形成などの社会的諸現象の出現の変異に関する比較研究の成果を紹介し,鳥類の社会形態への生活史要因の関与についてまとめた.生活史要因は高次分類群間の変異に関与し,一方,生態的要因や環境要因は低次分類群間の変異に関与している.これは,生活史要因は特定の社会現象や行動の出現の素因を与え,その素因を持つ分類群で実際にそれらの形質が出現するかどうかは生態的要因や環境要因が決定するという,階層的な進化過程の理解である.

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