急性リンパ性白血病の寛解導入療法中に発症した鼻脳型ムーコル症例

  • 牧原 靖一郎
    香川労災病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
  • 石原 久司
    香川労災病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
  • 宮武 智実
    香川労災病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
  • 津村 宗近
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学
  • 野田 洋平
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学
  • 檜垣 貴哉
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学
  • 假谷 伸
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学
  • 岡野 光博
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学
  • 西﨑 和則
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Rhinocerebral Mucormycosis with Acute Lymphocytic Leukemia

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抄録

急性浸潤型副鼻腔真菌症は眼窩や脳内に進展し極めて難治性で予後不良な疾患である。今回,急性リンパ性白血病の寛解導入療法中に発症し,不幸な転機となった鼻脳型ムーコル症の一例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。症例は74歳,女性。当院血液内科で急性リンパ性白血病と診断され,入院2日目より寛解導入療法を開始した。治療開始後から徐々に左視力低下,軽い左眼周囲の痛みを感じ,入院21日目より左眼瞼腫脹,複視を認めるようになり,25日目に眼科受診。左眼球運動の全方向への障害,左眼圧の上昇,左視力低下を認め,CTで副鼻腔炎からの左眼窩蜂窩織炎の疑いにて同日当科紹介受診した。両側鼻内,特に左鼻副鼻腔粘膜は大部分が黒色で壊死性変化をきたしており,病理検査でムーコル症の診断となった。診断後からリポソーマルアムホテリシンBの全身投与を開始した。左眼球摘出も含めたデブリードマンを勧めるも,患者とその家族が拒否したため,入院32日目に鼻副鼻腔内の病変部位を内視鏡下鼻副鼻腔手術にて可及的に除去した。左眼窩内への操作は行わなかった。術後からアムホテリシンBによる鼻腔内洗浄を開始した。入院33日目には左眼光覚消失,37日目より口蓋の穿孔,鞍鼻が生じた。入院96日目に急性細菌性肺炎生じ,98日目に永眠された。拡大手術を行い,薬物治療を併用したとしても根治する保証はない非常に予後の悪い疾患のため,できるだけの早期診断と治療開始が必要と考えられた。

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参考文献 (5)*注記

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